研究実績の概要 |
妊娠高血圧腎症(Preeclampsia; PE)は胎児発育不全(Fetal growth restriction; FGR)などの重篤な合併症を併発し,母体や児の予後に大きな影響を与える.PE・FGRの成因として,絨毛外栄養膜細胞の浸潤不全やシンシチウム化不全などによる胎盤形成不全が関連しているといわれているが,明確な病態メカニズムは解明されていない.カルネキシン(CNX)とカルレティキュリン(CRT)はともに小胞体の分子シャペロンであり,ヒト胎盤に高発現している.我々は,CRTが胎盤形成におけるシンシチウム化や絨毛細胞融合を調整することを明らにした. 本研究では,CRTの機能的パラログ分子であるCNXの胎盤の機能維持や胎盤機能不全の病態における役割を胎盤絨毛モデル細胞株や臨床サンプルを用いた生化学的実験系を通じて解明し,胎盤形成不全の有効な治療標的分子の同定や,病態メカニズムに合わせた新規治療法開発を目指している.以下の項目に従って研究を進め、項目(1)から(3)については新たな知見が得られたため、昨年論文として報告した.(4)については現在進行中である. (1)CNX低発現BeWo細胞の作製 (2)胎盤絨毛細胞におけるCNX基質糖たんぱく質に関する生化学的解析 (3)CNX低発現BeWo細胞におけるシンシチウム化に関する細胞生物学的解析 (4)ヒト胎盤組織を用いたCNX発現量および臨床的特徴に関する解析
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