研究課題/領域番号 |
21K09504
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福井 淳史 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00321969)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | NK細胞 / 不育症 / 不妊症 / NKp46 / 着床不全 / 精液 / 体外受精・胚移植 |
研究実績の概要 |
子宮内膜におけるNK細胞表面に発現する活性性受容体であるCD16およびNKp46と他の活性性あるいは抑制性受容体との共発現を測定し、その生理学的意義、不妊症(着床不全)・不育症への関与を解明すること、さらには免疫担当細胞の妊娠の成立および維持に関する役割を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。 施設倫理審査委員会の承認と患者への説明と同意のもと、子宮内膜組織を着床不全患者、不育症患者より、脱落膜組織を流産手術時の余剰脱落膜より採取した。子宮内膜組織を単細胞レベルまで粉砕し、NK細胞浮遊液を作成のうえ、子宮内膜NK細胞表面抗原(NK細胞のマーカーであるCD56、活性性受容体としてCD16、NKp46、NKG2C、NKG2D、抑制性受容体としてCD158a、NKG2A)発現およびサイトカイン産生(IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-10)をフローサイトメトリーにて測定した。 脱落膜における検討で、流産に至ったもののうち絨毛染色体検査が正常であったものでは、絨毛染色体が異常であったものに比して、NKp46+NK細胞、NKp46brightNK細胞の発現が有意に低値であった。NKp46+NK細胞の至適カットオフ値は86.5%(感度83.3%、特異度100%)、NKp46brightNK細胞の至適カットオフ値は70.9%(感度66.7%、特異度90.9%)であった。これらにより高値群、低値群の2群に分類するとNKp46発現低値群では、NKp46発現高値群に比してNK細胞におけるIL-4産生、IL-10産生およびTGF-β産生が有意に低く、IFN-γ/IL-4比およびTNF-α/IL-10比、すなわちNK1/NK2比が有意に高値であった。 以上より流産時脱落膜NK細胞のNKp46受容体発現を検討する事により免疫異常を有する生殖異常を抽出できる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮内膜・脱落膜を用いたNK細胞における活性性および抑制性受容体共発現測定およびサイトカイン産生は行えた。また精液による子宮内膜各種受容体による細胞分離後のサイトカイン産生も測定し得た。 精液刺激によるNK細胞サイトカイン産生異常を有する不育症患者への体外受精・胚移植導入を早期に実現させ、さらに翌年度も継続して検討を行い、十分な結果を出していきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は現在行っているNK細胞における活性性受容体および抑制性受容体の共発現およびサイトカイン産生についての測定を継続するとともに、NK細胞をさらに各種受容体発現により細分化し、それらの機能発現を明らかにしていきたい。また精液刺激によるNK細胞サイトカイン産生異常を有する不育症患者への体外受精・胚移植導入を早期に実現させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究費を消耗品購入、旅費、その他に充てたが、実験用試薬などの購入が急を要さなかったため、また人件費(実験補助)も必要としなかったため次年度使用へと回した。
|