研究実績の概要 |
子宮内膜の発がんおよび転移促進的な遺伝的相互作用を明らかにすることを目的に、マウス子宮内膜オルガノイドにヒト子宮体がんで高頻度の遺伝子異常やシグナル経路の異常を再現して、ヌードマウス皮下に接種し腫瘍原性を評価した。変異型KrasにCdkn2a発現抑制あるいはTrp53欠失の組み合わせで高率に癌肉腫が誘導されることを見出した。その後のオルガノイドを用いた解析からTgfbr2欠失が子宮内膜発がんや転移能獲得に関与している可能性が示唆されたため、Tgfbr2欠失に着目して発がんおよび転移の誘導が可能かを検討した。変異型KrasとTgfbr2両アレル欠失の導入で発がんし、そこにCdkn2aあるいはPten発現抑制を追加すると転移性癌の誘導に成功した。また、Tgfbr2片側アレル欠失についても同様の実験を行い、変異型Krasを発現した子宮内膜細胞の発がんや転移においてTgfbr2, Cdkn2aおよびPtenが発がんや転移において重要な役割を担っていることが示唆された。本年度は変異型KrasとTrp53欠失による別の癌肉腫モデルを用いて実験を行った。具体的には、KrasLSL-G12D/+;Trp53flox/floxマウス由来の子宮内膜オルガノイドにCreを導入して、変異型Krasの発現およびTrp53欠失を誘導し、そこにshTgfbr2を導入してヌードマウス皮下で腫瘍原性を評価した。しかし、Tgfbr2の発現抑制による明らかな変化は確認されなかった。子宮内膜オルガノイドを用いたハイブリッド型発がんモデルにおいて、現時点では変異型Krasを伴わずに安定的に発がん可能な遺伝子異常の組み合わせの同定には至らなかった。
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