研究実績の概要 |
本年度は、卵巣癌細胞株におけるポリアミンの発現とポリアミン代謝経路阻害剤であるDFMO (α-difluoromethylornithine)による細胞増殖抑制効果の検討を行った。 卵巣上皮由来不死化細胞(VOSE)と卵巣癌細胞株(A2780, A2780CP, RMG-1, TOV21G, ES-2, SKOV-3, SKOV-3ip1, OVCAR3, HAC2, Caov-3)に対して蛍光性試薬であるPolyamineREDで蛍光染色を行い、細胞内ポリアミンの発現を検討した。正常細胞(コントロール)であるVOSEと卵巣癌細胞株でポリアミンの発現に相違は認めず、ほとんどの細胞でポリアミンは強い発現を認めた。卵巣癌細胞株の種類によってもポリアミンの発現に相違は認めなかった。 卵巣癌細胞株(A2780, RMG-1, SKOV-3, Caov-3)に対してDFMOを0, 1, 10, 100, 1000μMで投与してポリアミン代謝経路阻害による細胞増殖抑制効果への影響を検討したところ、未分化癌細胞由来のA2780と漿液性癌由来のSKOV-3ではDFMO100μMでコントロールと比較して有意に細胞増殖が抑制されたが、明細胞癌由来のRMG-1と粘液性癌由来のCaov-3では1000μMで有意な細胞増殖抑制効果を認めた。 今後はDFMOとcisplatin, paclitaxel, PARP inhibitorを併用投与してポリアミン代謝経路阻害剤が抗がん薬や分子標的薬の殺細胞効果を増強するのか検討を進める予定である。また、卵巣癌37例、境界悪性7例、良性31例の腫瘍、唾液、血液、尿を採取してメタボローム解析中であり、結果をみてポリアミン代謝経路が新たな卵巣癌のマーカーとなり得るか検討する予定である。
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