研究課題/領域番号 |
21K09514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 建 京都大学, 医学研究科, 講師 (20378772)
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研究分担者 |
馬場 長 岩手医科大学, 医学部, 教授 (60508240)
山ノ井 康二 京都大学, 医学研究科, 助教 (70868075)
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (80283597)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フェロトーシス / 卵巣癌 / 明細胞癌 / Hippoシグナル |
研究実績の概要 |
卵巣細胞株パネルを用いてフェロトーシス誘導剤(エラスチン、ML210)の50%阻害濃度(IC50値)を測定した。卵巣明細胞癌株は他の組織型の株と比較してIC50値が高く、明細胞癌はフェロトーシス耐性であることが示唆された。また、シスプラチンIC50値が高い細胞株では有意にエラスチンIC50値が高かった。フェロトーシス誘導剤(エラスチン)のIC50が高い細胞株は低い細胞株と比較して細胞接着に関わる遺伝子が多く含まれていた。Hippoシグナルは細胞接着に関わるパスウェイである。 臨床組織でも検討するために、MDAと8ーOHdGの免疫組織染色を行った。MDAは酸化ストレスによる脂質ストレスマーカーであるためフェロトーシスの影響を示唆する一方で、8ーOHdGは酸化ストレスによるDNA損傷マーカーであるため、一般的な酸化ストレスマーカーと考えられる。明細胞癌は類内膜癌よりも、類内膜癌は高異型度漿液性癌よりも有意に8ーOHdGが強く染まっている一方で、MDAは明細胞癌と類内膜癌との間には差はなく、いずれも高異型度漿液性癌よりも有意に強く染まっていた。つまり、明細胞癌は最も酸化ストレスを受けているが、脂質ストレスは類内膜癌と同等でありフェロトーシスに陥りにくい機序があり、高異型度漿液性癌はそもそも酸化ストレスが少ないことが示唆された。また、Hippoシグナルの最終的な調整因子である転写因子YAPを免疫組織染色で評価すると、明細胞癌は高異型度漿液性癌よりも核のYAP染色が弱かった。また、明細胞癌症例において核YAPが低発現な症例は高発現の症例と比較して有意に全生存期間が短かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説通りに明細胞癌は他の組織型よりもフェロトーシス誘導剤に対して抵抗性を示す結果であった。明細胞癌においてHippoシグナルが最終的に調整するYAPは高異型度漿液性癌よりも核での発現が低くなり、フェロトーシスになりにくいことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
明細胞癌においてYAP活性がフェロトーシスに関わるかをin vitroアッセイで解析する。 YAP活性を制御する分子を探索する。 マウス卵巣明細胞癌モデルを用いてYAP活性や、YAP活性を制御する分子を制御することでフェロトーシスに陥りやすくなるか、治療標的の可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
明細胞癌細胞株を用いてYAP活性、YAPを制御する因子の機能実験を行うため、細胞培養、実験試薬、マウス実験費に用いる
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