研究課題/領域番号 |
21K09516
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
折出 亜希 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (00423278)
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研究分担者 |
金崎 春彦 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (10325053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視床下部 / キスペプチン |
研究実績の概要 |
女性生殖機能制御の中枢となるのは視床下部キスペプチン(Kiss-1)ニューロンとその下流にあるGnRHニューロンである。 AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、女性では主に前胞状卵胞と小胞状卵胞の顆粒膜細胞によって産生され、休止中の原始卵胞から成長中の卵胞への移行を調節している。AMH受容体は卵巣だけではなく視床下部GnRHニューロンにも発現し、GnRHニューロンを活性化するとの報告がある。そこで、視床下部Kiss-1及びGnRH発現細胞株を用いてAMHの中枢作用について検討を行った。 視床下部前腹側室周囲核(AVPV)にあるKiss-1ニューロンはGnRHのサージ状分泌を誘起し、視床下部弓状核(ARC)にあるKiss-1ニューロンはニューロキニンB、ダイノルフィンAを同時に発現し、KNDy ニューロンとしてGnRHパルス分泌を制御するといわれている。我々は、ラットAVPV領域由来のmHypoA-50細胞とARC由来のKNDyニューロンであるmHypoA-55細胞を用いて研究を行った。両細胞をAMHで刺激しKiss-1及びGnRH発現について検討した。 両細胞にAMH受容体が発現していることを確認した。両細胞をAMHで刺激するとKiss-1発現は変化しなかったが、GnRH発現が有意に増加した。ARC由来のmHypoA-55細胞においてはキスペプチン(KP10)刺激でKiss-1発現が有意に増加したが、KP10によるKiss-1の増加はAMH存在下で完全に抑制された。KNDyニューロンであるmHypoA-55細胞におけるキスペプチン受容体、ニューロキニンB、ダイノルフィンA発現はAMH刺激で変化しなかった。 AMHはGnRH発現を増加させて視床下部-下垂体-性腺軸に影響を与える他、GnRHパルス中枢であるKNDyニューロンにおいてキスペプチン発現に対し抑制的に作用する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまで中枢での生殖機能制御機構を明らかにするために研究を行ってきた。視床下部キスペプチンニューロンがどのように制御されているかはまだ明らかでないことが多く、これを明らかにすることは、多嚢胞性卵巣症候群など女性内分泌内分泌異常に起因する疾患の病因の解明につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アロマターゼやアクチビン、インヒビンは卵巣から産生分泌されることが知られているが、これらは卵巣だけれはなく視床下部にも発現していることがわかっている。これらの生理活性物質がキスペプチンニューロンにどのように作用するのかを検討し、キスペプチンの発現調節機構の解明をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の感染拡大に伴い、学会がWEB開催になったため、旅費を使用しなかった。また物品に関して、以前使用していた培養液やその他の消耗品を使用したため、物品費が計画より少なくなった。 今年度は新型コロナウイルス感染症の状況にもよるが、学会に参加し成果発表を行う予定である。また今年度は、昨年度に消耗した物品及び実験動物を購入予定である。
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