研究課題
キスペプチンとキスペプチン(Kiss-1)受容体は視床下部だけではなく卵巣にも発現している。キスペプチンは卵胞から産生される性ステロイドホルモンや他の生理活性物質に作用し、顆粒膜細胞や卵子に影響を与えている可能性がある。そこで採卵時の卵胞の大きさと顆粒膜細胞におけるキスペプチン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド (PACAP)とその受容体発現をPCRにて検討した。また卵胞液中のエストラジオール(E2)、プロゲステロン(P4)、E2代謝産物2-メトキシエストラジオール(2-ME)値及び卵子の有無との関係について検討した。また卵胞液中の採卵時の卵胞直径12mm未満を小卵胞、12mm以上を大卵胞とし卵胞液を回収した。患者3名計29個の卵胞から卵胞液を回収した。卵子が存在したものは大卵胞12/20個(60 %)、小卵胞5/9個(55.6 %)であった。顆粒膜細胞におけるキスペプチン、GnRH、Kiss-1受容体、GnRH受容体、PACAP遺伝子発現は卵胞の大小で有意差はなかった。アロマターゼおよびPACAP受容体遺伝子発現は小卵胞に比べて大卵胞で有意に低かった。卵胞液中のE2値は小卵胞に比べ大卵胞で有意に高かった。卵子の有無でE2値に差を認めなかった。卵胞液中のP4値も大卵胞で有意に高く、卵子の有無で差を認めなかった。2-ME値も大卵胞で高値であり、卵子の有無で差はなかった。2-MEは卵巣での血管新生や性ホルモン生合成、顆粒膜細胞の増殖分化に関与している。今回の研究ではE2、P、2-ME値は小卵胞に比べ大卵胞で高値であったが全て卵子の有無には関係しなかった。またアロマターゼ、PACAP受容体遺伝子発現は卵胞サイズで相違がみられ、卵胞発育への関与が示唆された。今回の検討ではキスペプチン及びKiss-1発現は卵胞サイズで相違がみられなかった。
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