研究課題/領域番号 |
21K09517
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田村 博史 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50379947)
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研究分担者 |
竹谷 俊明 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (70464328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メラトニン / 顆粒膜細胞 / 体外受精胚移植 |
研究実績の概要 |
不妊治療で行う体外受精胚移植(IVF-ET)では卵子の質の低下のため満足いく妊娠率が得られていない。生殖補助医療技術の進歩にもかかわらず、卵子の質を向 上させる有効な方法も確立していない。松果体ホルモンであるメラトニンは卵胞液中にも高濃度に存在し、その抗酸化作用によって活性酸素から卵子や顆粒膜細 胞を保護することが明らかとなっており、卵子の質の向上を目的とした不妊症患者に対するメラトニン投与の臨床応用も行われている。しかし、メラトニンが卵 子の質をどのようなメカニズムで向上させるのかは明らかでなく、遺伝子レベルでの詳細な検討が望まれる。そこで、このメカニズムを解明するため、卵子の質 の不良な症例に対してメラトニン錠3mg/日を併用して体外受精胚移植を施行し、採卵時に採取した顆粒膜細胞を用いて実験を行った。メラトニン投与によって受 精率上昇、胚盤胞が得られた症例において、メラトニン投与前後でどのような遺伝子変化がみられるかを顆粒膜細胞の遺伝子解析をRNAシークエンスで行った。 Gene ontology解析では、メラトニン投与群では細胞死の抑制、T細胞活性、ステロイド産生、血管新生に関する遺伝子群が変化を認め、これらの遺伝子群を制御 することでメラトニンは卵子の質の向上に関与していると考えられた。また、クラスタリング分析では、メラトニン投与によって網羅的な遺伝子発現は、卵子の 質良好な体外受精胚移植の成績良好群の遺伝子発現に近づいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵胞液中の顆粒膜細胞層には免疫系細胞や血管内皮細胞などが含まれている可能性があり、それぞれの細胞における遺伝子発現をsingle cell RNA sequence (scRNA seq)で解析することでより詳細なメラトニンの作用を解明する予定であるが、各細胞への分離方法やscRNA seqの細胞調整法、RNA検体作成に改善、修正すべき点があり進捗に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
メラトニンによってどのような遺伝子変化がみられるかを顆粒膜細胞の遺伝子解析をRNAシークエンス、single cell RNA sequence (scRNA seq)で解明する。RNAシークエンスの結果を Gene ontology解析で解析すると、メラトニン投与群では細胞死の抑制、T細胞活性、ステロイド産生、血管新生に関する遺伝子群の変化を認めた。また、卵子の成熟に関与するミトコンドリア機能、アポトーシス、オートファジー、抗酸化能、細胞増殖などに関連する遺伝子の変化についてもメラトニンの影響を詳細に検討する予定である。進行の遅れているscRNA seqに関しては、修正点を検討しており、改善を進め施行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
single cell RNA sequence (scRNA seq)によって、卵胞液中に含まれる顆粒膜細胞、免疫系細胞、血管内皮細胞など、それぞれの細胞における遺伝子発現を解析することでより詳細なメラトニンの作用を解明する予定である。各細胞への分離方法やscRNA seqの細胞調整法、RNA検体作成に改善、修正すべき問題点を解決する作業に時間がかかっており、進捗に遅れが出ている。そのためscRNA seqの経費を次年度に繰り越すことになった。また、マイクロアレイのデータ解析も次年度へ持ち越すものがあるため。
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