研究課題/領域番号 |
21K09526
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
東海林 博樹 金沢医科大学, 一般教育機構, 教授 (10263873)
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研究分担者 |
酒井 大輔 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (90632646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胎盤形成 / 栄養膜細胞 / 低酸素刺激 |
研究実績の概要 |
本研究では、胎盤栄養膜細胞の浸潤性細胞への分化制御における低酸素刺激と、ガレクチンとよばれる糖結合タンパク質ファミリーの機能解明を目的としている。 本年度は、低酸素刺激への応答で中心的役割を果たすHIF1α遺伝子の解析を行った。胎盤栄養膜細胞特異的にHIF1α遺伝子を欠損したノックアウトマウスを作成するために、2種類の系統のマウスを導入した(CYP19-cre, Tpbp-cre)。はじめにCYP19-creを用いた解析を行い、胎盤でHIF1α遺伝子を失ったマウスは生後間もなく死にやすい傾向が認められたが、まだ統計学的有意差を得るには至っていない。また、生存可能な個体にはついては特に異常は見いだせておらず、成体に達した個体は生殖能力も有する。生後間もなく死ぬ原因が、本当にHIF1α遺伝子を胎盤特異的に失ったためなのか、さらなる解析が必要である。 次に Tpbp-creを用いた解析を行った。こちらについては、CYP19-creのように生後間もなく死にやすいという傾向は認められていない。ただし、メンデルの法則から予測される産児数の割合として、HIF1αをホモで欠損した子の割合が低い傾向が認められている。また、妊娠10日目の胎盤を観察したところ、大きさにバラツキが認められたが、HIF1αをホモで欠損した胎盤が統計学的有意差を持って小さいなどの判定には至っていない。HIF1α欠損により胎盤に異常を来し、発生途中の胎児が死んでいる可能性を含めて現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、まず海外から新たに導入した2種類のマウス系統(CYP19-cre, Tpbp-cre)を安定的に使用できるようにする必要があり、それは達成出来た。またTpbp-creについては、GFPの発色により胎盤特異的な発現も確認できた。両系統を用いて表現型の解析を進めている。 また、今後行うガレクチンファミリーの機能解析に必要な各種ガレクチン遺伝子(cDNAクローン)や組換えタンパク質について、共同研究先から供給を受けるなどにより準備が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
胎盤栄養膜細胞特異的なHIF1αノックアウトマウスについて、さらなる解析を進める。まずは確認事項として、Creが確かに作用して、胎盤特異的にHIF1αが失われているかを解析する。その上で、現在傾向として認められている表現型について、さらに例数を増やして解析を行う。Tpbp-creを用いた場合の胎盤の大きさについては、妊娠10日目以降の解析を進めていく。 一方、HIF1αとガレクチンファミリーとの連携について、栄養膜細胞でHIF1αを欠損させたときに、発現が変動するガレクチン分子を探索する。HIF1αの制御下にあるガレクチンが見つかれば、その働きが胎盤形成にどのような役割を果たすのか探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、抗体やキット等比較的高額な試薬を要する免疫組織学解析に予算を充てていたが、多用するまでには至らなかった。また、他の研究プロジェクトとの試薬や資材の共用により、予算を節約できた。 次年度は、ノックアウトマウスの表現型の詳細な解析を行うため、分子生物学用試薬や免疫組織学的解析試薬に多額の費用を要する見込みである。また、DNAマイクロアレイ解析など、遺伝子発現に関して受託解析サービスを利用する予定もある。
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