研究課題
上皮性卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中でも腹腔内播種を伴う進行した状態で見つかることが多く、手術のみで完治することは難しいため薬物療法の役割は重要である。卵巣癌で最も頻度の高い漿液性癌は比較的薬物療法感受性が高いが、明細胞癌はキードラッグとなる白金製剤に対して抵抗性を示す。明細胞癌の卵巣癌における頻度には人種差があり、本邦では上皮性卵巣癌の約1/4を明細胞癌が占め、腫瘍の特性に応じた治療開発が必要である。我々の先行研究で明細胞癌の全エクソーム解析を行なった結果、明細胞癌の進行度と転写因子であるZFHX4の体細胞ゲノム変異との間に相関が認められた(Shibuya Y and Tokunaga H, et al, Genes Chromosomes Cancer, 2018)。転写因子ZFHX4の機能についてはまだ解明が不十分であるが、クロマチンリモデリング に関わるCHD4の発現を調節し、さらにCHD4と直接タンパク間結合し転写を共調節する可能性が示されている。TCGAで公開されているデータを参照すると、ZFHX4およびCHD4の遺伝子発現量は予後と相関することが判明した。(図1 PLoS One. 2021 Jun 23;16(6):e0251079. doi: 10.1371)。卵巣癌細胞株へZFHX4及びCHD4に対するsiRNAを用いたノックダウン実験でシスプラチン感受性が上がるというデータを得ており(図2PLoS One. 2021 Jun 23;16(6):e0251079. doi: 10.1371)、白金製剤への感受性調節が予後に寄与している可能性が示唆される。
3: やや遅れている
R3-4年度は卵巣がん細胞株および患者由来の腫瘍摘出検体由来のオルガノイド作成を計画していた。比較検討のため細胞培養条件を可能な限り同条件とする実験系の樹立を試みたが、臨床検体オルガノイドの樹立ができていない。
共同研究者との対面での実験手技確認が、COVID-19の流行による出張制限のためにできなかった。R5年度には実験手技の見直しと遅れているオルガノイドライブラリ調整を完了し、in vitroの研究計画の遂行に注力する。
情報収集のための学会参加は基本的にwebとなり、旅費の支出が予定より大幅に減少した。また、オルガノイドモデルの作成に時間を要しており、比較的試薬と解析費用の嵩むChIP-seqの実施は次年度に行う予定である。
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International Journal of Clinical Oncology
巻: 27 ページ: 1874~1880
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The Tohoku Journal of Experimental Medicine
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