研究課題/領域番号 |
21K09533
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
齊尾 征直 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (40242721)
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研究分担者 |
西島 良美 群馬大学, 大学院保健学研究科, 講師 (10710733)
小林 さやか 群馬大学, 大学院保健学研究科, 助教 (80765694)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核の剛性 / 核ラミナ / ラミン / 卵巣癌 / エメリン |
研究実績の概要 |
本年度は,群馬大学医学部附属病院で外科的に切除された卵巣癌140症例を解析した。概略は、まずHE標本とWT-1, HNF1-β, estrogen受容体,Cytokeratin20,Vimentin染色標本を作製し各腫瘍の組織型の確定を行った。(高異型度漿液性癌(HGSCa):38例, 明細胞癌(CCCa):63例, 類内膜癌(EMCa): 25例, 粘液癌(MUCa): 14例。)次にFeulgen染色およびLamin Aとemerinの免疫組織化学染色を行った。各標本の任意の5か所を撮影し,その画像を画像解析ソフトで解析した。その結果,腫瘍細胞の核の形状因子(面積・核周囲長・真円度)は、EMCaは、CCCaに比べて有意に小さく、EMCaではCCCaに比べて腫瘍細胞の核は有意に小さかった。他方,Lamin A陽性の核の比率と核の形状因子との相関は、CCCaとEMCaでは核の面積と相関があり、CCCa、EMCa、MUCaでは核周囲長と相関があった。他方,HGSCaとEMCaでは核の真円度と負の相関があった。Emerinの陽性率と核形状の諸因子との相関は、HGSCaでは真円度と相関があり、CCCaでは核面積と正の相関があったが,他の因子との相関はなかった。本研究の結果から、4組織型間で核の形状を比較した場合には、EMCaは最も核が小さく、核の大小不同が軽度であり、CCCaでは大型の核や核の大小不同性も目立つことが明らかとなった。HGSaが教科書的には核異型が強いといわれていたが,本研究ではCCCaが4組織型中では最も核の変化が目立つ腫瘍である可能性が示唆され,新しい知見であった。また,核膜タンパク発現の解析では、核形状維持にはEmerinの発現よりもLamin Aの発現が強く寄与していることが示唆され,新規の知見であった。これらのデータをもとに英文作成し,論文掲載に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文を一つ投稿し,掲載されるに至っており,おおむね順調と考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は卵巣癌の転移巣と原発巣におけるLaminA, B1, B2などの発現状態の比較を卵巣の4大癌(高異型度漿液性癌,明細胞癌,類内膜癌,粘液癌)の中から主にStageの高い高異型度漿液性癌を主体として行うとともに,LaminやEmerinの発現をSiRNAなどを用いて調整した卵巣癌の培養細胞株での浸潤能の比較検討を2段のスライドチャンバーで行い評価したり,核の形状の変化をセルブロック作製や液状化検体細胞診標本の技術で細胞診の標本作製をして評価してゆく予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に使い切る形で計画し,使い切る形で実施したと考えていた.ところが実際は14052円使い切れていなかった.使用できなかった事で特に研究が進まなかったことはなく,英文の論文も執筆し発表し順調に推移したが,次年度使用額については,今年度は細胞培養を含めて始めており,そちらの費用として使用する予定である.
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