研究課題/領域番号 |
21K09537
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
布施谷 千穂 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (50447736)
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研究分担者 |
浅香 亮一 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00623688)
小野 元紀 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (10816432)
塩沢 丹里 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20235493)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 6-MITC / Wasabi / endometrial carcinoma / NK cell activity / apoptosis |
研究実績の概要 |
子宮内膜癌細胞株5種、正常細胞としてHUVECと不死化子宮内膜腺上皮細胞を用いて、細胞生存率に対するワサビ由来の6-(methylsulfinyl) hexyl isothiocyanate(6-MITC)の効果を検討したところ、子宮内膜癌細胞株に対してはIC50 9~1マイクロMであったが、正常細胞に対しては、50マイクロMまでで50%以上の抑制を認めなかった。玉ねぎ由来のallyl isothiocyanate (AITC) 、ブロッコリー由来の4-(methylsulfinyl) butylisothiocyanate(4-MITC)との比較では、6-MITCの方がより強い細胞生存率抑制効果を示したが、特にIshikawa、HEC265、HEC108で差が大きかった。6-MITCによる細胞生存率低下効果の機序としてapoptosisへの影響を検討したところ、Ishikawa、HEC108、HEC265では抗apoptosisタンパクであるBCL2の発現低下とapoptosisタンパクであるcleaved-caspase3の発現増強し、Annexin V陽性のapoptosis細胞の増加を認めたが、6-MITCの細胞生存率低下効果が低いHEC1Bでは、apoptosis細胞の増加を認めなかった。IshikawaおよびHEC1Bのヌードマウス皮下異種移植腫瘍の検討では、6-MITC経口投与により有意に腫瘍増大が抑制された。この際、両細胞株でApoptosisが誘導されていることが示された。さらに、異種移植腫瘍を有するヌードマウスのNatural Killer(NK)細胞活性を検討したところ、6-MITC経口投与によりNK細胞活性の有意な増強が観察された。6-MITCはNK細胞活性増強を介して、生体内ではapoptosisを誘導している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常細胞に対する効果では、不死化子宮内膜腺上皮細胞を加えることにより、がん細胞への選択毒性が強いことを示すことができた。また動物実験でも有意に腫瘍増大を抑制できており、さらに、HEC1B細胞には、in vitroではapoptosis誘導効果を示せなかったが、in vivoではapoptosis誘導が認められており、その作用にNK細胞活性増強作用が関与している可能性を示すことができた。6-MITCによるNK細胞活性増強については、これまでに報告がなく、新規性の高い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に実験計画に沿って、研究を進めていく。他の免疫細胞への影響についても検討していく。我々は子宮体癌を発癌する正常免疫能を有する遺伝子改変マウス系統を保有しており、このマウスでの6-MITCの各種免疫細胞系統への影響や腫瘍浸潤白血球の種類などへの影響を検討する。培養細胞を用いた実験や、各種アッセイ実験については、これまでのところ、施行に問題はない。動物実験についても施行に問題はない予定である。新規アッセイについては、施設内で助言や指導を受けられる体制である。
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