研究課題/領域番号 |
21K09545
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (80326149)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 均衡型染色体相互転座 / 染色体分離様式 / 流産 / 不育症 / PGT-SR / 分割期胚 / 胚盤胞 |
研究実績の概要 |
カップルのどちらかが均衡型染色体相互転座を有する8例から得ら胚盤胞88個に対して、PGT-SRを施行した。PGT-SRは、comparative genomic hybridization array (array CGH)、あるいは次世代シーケンサー (next generation sequencer; NGS)を用いて、全染色体の数的異常に関する網羅的解析 (comprehensive chromosome screening; CCS) によって行った。 解析結果から特定した、それぞれの胚盤胞の受精前の染色体相互転座保因者の配偶子における、各染色体分離様式の頻度は、交互分離47%、隣接Ⅰ型分離37.9%、隣接Ⅱ型分離3.0%、3:1分離12.1%であった。これらの結果と、当施設でこれまでに行った分割期胚391個における結果との比較では、交互分離と隣接Ⅰ型分離の頻度は、胚盤胞期での解析の方が有意に高く(p<0.01)、3:1分離の頻度は、胚盤胞期での解析の方が有意に低かった (p<0.01) 。 これらの結果より、不均衡の程度の強い染色体構造異常を有する胚は、正常あるいは均衡型や不均衡の程度の弱い構造異常を有する胚に比較して、分割期胚から胚盤胞へ発生する段階で淘汰される可能性が高いことが推測された。 上記結果より、PGT-SRの施行時期としては、解析対象数を減少できる胚盤胞期での解析の方が、効率的であると考えられた。 また、胚盤胞期での解析における保因者性別での比較 (男性保因者4症例 vs. 女性保因者4症例) では、交互分離45.8 vs. 47.6%、隣接Ⅰ型分離45.8 vs. 33.3%、3:1分離4.2 vs. 16.7%であり、いずれの分離様式の頻度も差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚盤胞を検体としたarray CGHあるいはNGSでのPGT-SRは研究計画通り進んでおり、現時点で胚盤胞88個での解析結果が得られている。分割期胚での各染色体分離様式の頻度との比較や、保因者性別との関連についての解析も行えている。 胚盤胞期での各染色体分離様式の頻度と、転座切断点の存在する腕 (短腕あるいは長腕) 、転座染色体の着糸点による分類 (中部着糸型、次中部着糸型、端部着糸型) 、転座部分のサイズ、四価染色体の形態等との関連についての解析のためには、さらなる症例の増加が必要である。 一方、発生停止胚では解析は、十分には行えていない。それは、発生停止胚での細胞の生検が困難であること、細胞が変性しているものもあり解析が困難であるなどの理由による。今後、生検方法、解析方法の検討が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.胚盤胞での解析をさらに進める:検体数が増加した段階で、各染色体分離様式についての解析結果と、研究計画で設定した各因子との関連について解析を行う。 2.対象症例の増加を目指す:各染色体分離様式の頻度と、転座切断点の存在する腕 (短腕あるいは長腕) 、転座染色体の着糸点による分類 (中部着糸型、次中部着糸型、端部着糸型) 、転座部分のサイズ、四価染色体の形態等との関連についての解析のためには、均衡型染色体相互転座の染色体核型のバリエーションが必要であるため、対象症例の増加を目指す。 3.発生停止胚での解析方法について検討:発生停止胚における生検方法の工夫、改善を行い、生検成功率の向上を試みる。生検により採取した細胞の解析方法の改善を行い、解析可能率の向上を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、学内の経費を用いて研究に必要な試薬の一部を購入した。また、ほとんどの学会がWeb開催となったため、旅費としての必要経費が当初の予定より低額であった。 残金は、2022年度以降に予定している研究(胚盤胞生検、WGA、NGSでの解析等)のキット、試薬の購入費に充てる予定である。
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