研究実績の概要 |
ホルモン補充療法(hormone replacement therapy, HRT)はエストロゲン欠乏に起因する更年期症状の緩和や骨粗鬆症のリスク低下等の目的で用いられる。HRTの問題点のひとつとして、各種ステロイドホルモンの動脈硬化リスクに対する影響が未解明なまま結合型エストロゲン(CEE)と酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)が繁用されてきたことが挙げられる。エストロゲンとして使用されるCEEにはヒトに存在しないエクイリン(Eq)等が含まれる。ヒトにおいて最も活性の高いエストラジオール (E2)が動脈硬化保護作用を持つことはある程度のコンセンサスが得られている一方で、他のエストロゲンについての動脈硬化リスクに対する影響については検討がなされていないのが現状である。しかし、研究手法の困難さから、ステロイドホルモンの血管内皮への影響を検討した基礎的研究はごく限られており、いまだ一定の見解が得られていない。動脈硬化発症の初期段階では血管内皮への接着分子を介した単球接着が引き金となる。われわれは単球の血管内皮への接着反応を検証しうるflow chamber systemを確立させている。本年度では、昨年度に引き続きE2およびEqによる実際の動脈硬化発症リスクを検討するためにin vivoでの実験を行った。ApoE蛋白欠損マウスを動脈硬化モデルマウスとして使用し、E2およびEqを皮下投与したのち9および12週後に大動脈およびその分枝を摘出した。摘出した大動脈およびその分枝をen face解析およびaortic root解析を用いることにより動脈硬化病変の検討を行った。その結果、control群に比しE2では動脈硬化抑制作用が見られたが、Eqの投与ではある程度の抑制効果は認められたものの、その効果はE2に比し減弱していることを見出した。
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