研究課題/領域番号 |
21K09547
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岩井 加奈 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60588531)
|
研究分担者 |
山田 有紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20588537)
松原 翔 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20825236)
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50382289)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 子宮腺筋症 / 月経困難症 / 過多月経 / 不妊症 / MRI |
研究実績の概要 |
子宮腺筋症は過多月経や月経困難症などといった症状を有する疾患である。子宮腺筋症は組織学的に分類されるとする報告があり、内膜基底層が筋層に直接入り込むと考えられる1型子宮腺筋症と、骨盤に発症した子宮内膜症が子宮外側から子宮漿膜に浸潤することで子宮筋層内に進展すると考えられる2型に分類される。1型子宮腺筋症と2型子宮腺筋症においてはいずれもI型コラーゲンとIII型コラーゲンが強発現し線維化の原因となっていることが明らかとなっているが、両者の線維化のメカニズムは異なる可能性が報告されている。 今回私たちは、子宮腺筋症の形態学的評価を行い、臨床所見との関連について調査した。当院で術前検査としてMRIを行い、外科的に摘出された標本の病理学的検査により子宮腺筋症の診断が確定された220例を対象とした。 子宮が前屈した症例と比較し、前後屈のない症例および後屈した症例において、統計学的に有意に月経困難症を有する率が高かった。また腺筋症病変部位の厚みが20.5mm以上の症例でも同様の結果であった。 子宮腺筋症症例での過多月経を有するカットオフ値については、前壁、後壁の子宮筋層厚の合計を60.5mmとすると、過多月経の感度が0.504、特異度0.711、AUC 0.582、p-value 0.039であった。また子宮全体の大きさである子宮底長は102.5mmをカットオフとすると、過多月経の感度は0.592、特異度0.667、AUC 0.618、p-value 0.003であった。また子宮腺筋症は不妊症との関連についても示唆されている。解析では、不妊症を合併し得る子宮内膜症を合併する症例において、非合併例と比較して不妊症を生じる率が有意に高い(OR 9.00, 95%CI 1.797-45.087, p=0.008)ことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は臨床症状と子宮腺筋症の組織学的・形態学的な関連について、明らかにすることができた。それにより、子宮腺筋症の治療選択に寄与できる可能性がある。しかし、子宮腺筋症の線維化に関する因子の同定までは行えておらず、やや進捗は遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
私たちは子宮腺筋症の形態(屈曲、子宮の大きさ、子宮筋層の厚み)と月経困難症や過多月経との関連を調査し、子宮内膜症を合併することにより不妊症の発症率が上昇することを明らかにした。月経困難症や過多月経という女性のQOLを低下させる症状を有する子宮腺筋症に対し、その形態学的評価によって治療選択肢や方針に寄与する可能性が示唆されるものであった。 今後私たちは、子宮腺筋症の形態による分類が、疾患重症度、治療効果判定や予後を反映するか検証を継続していく。また、子宮腺筋症分子生物学的検索を加え、1型子宮腺筋症においても、子宮筋内で増殖した子宮内膜症細胞が何らかの因子を過剰発現することにより過剰なコラーゲン産生が生じ、子宮筋の線維化が生じる、とする仮説について検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
進捗がやや遅れており、使用予定であった細胞株や免疫染色関連の費用が使用していないため、次年度使用が生じた。来年度使用予定であり、細胞株や免疫染色関連の費用として使用する予定である。
|