本研究では、HPV18型陽性の子宮頸癌細胞株であるSKG-I 株とHela株を用いてHOXD9がHPV18型の初期プロモーターであるP105プロモーターを介して細胞の悪性形質に影響を与えているか検討し、その分子機構の解明を行った。 SKG-I 株とHela株でHOXD9遺伝子の発現を抑制したところ、細胞増殖が著明に抑制された。この細胞株ではHOXD9の抑制によりE6遺伝子発現が低下しており、P53タンパクの分解が抑制されることで、P53pathwayが活性化されたと考えられた。次に、E7遺伝子の発現を検討したところ、HPV18型陽性子宮頸癌では、HOXD9の抑制によりE7遺伝子の発現低下がRbタンパクの活性化を促し、この活性化したRbが転写因子E2Fの働きを抑制するため、G1アレストが生じて細胞増殖能が低下すると考えられた。HOXD9抑制による細胞内シグナルの変化を、解析プログラムであるIngenuity Pathway Analysisで検討したところ、P53 Pathwayの活性化とE2F pathwayの抑制が生じていることが確認された。次にHOXD9がP105プロモーターを活性化するか確認するため、pGL3プロモーターベクターを用いてluciferase assayを行ったところ、HOXD9がP105プロモーターに結合することが示された。さらにオールトランスレチノイン酸(ATRA)がHOXD9の発現を抑制することを示した。 以上のように、HPV18型陽性の子宮頸癌においてHOXD9は、その抑制によって細胞はアポトーシスを誘導されて細胞死に至る。その分子機構として、HOXD9はHPVのP105プロモーターに直接結合してE6遺伝子の発現を促進することでP53タンパクの分解を促進し、E7遺伝子の発現を促進することによりRbタンパクのがん抑制機能を阻害しE2Fを活性化させることが明らかとなった。
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