研究課題/領域番号 |
21K09551
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
川嶋 章弘 昭和大学, 医学部, 講師 (10783376)
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研究分担者 |
関沢 明彦 昭和大学, 医学部, 教授 (10245839)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧腎症 / DNAメチル化 / 初期絨毛 |
研究実績の概要 |
胎盤の形成・発達にエピゲノムが重要な役割を担っている。胎盤のエピゲノム異常は胎盤の形成異常と関連し、妊娠高血圧腎症の発症に関与することが示唆されているが、妊娠初期の絨毛細胞のエピゲノム上での変化がヒト胎盤の形成・発達に及ぼす影響は明らかではない。本研究では妊娠高血圧腎症をその後の妊娠経過中に発症する胎盤における妊娠初期のエピゲノム情報から妊娠高血圧腎症を発症するエピゲノム異常を特定し、妊娠高血圧腎症の病態形成のメカニズムの解明をする。このエピゲノム異常をマーカーとして妊娠初期に母体の血漿中の胎盤由来遊離核酸を定量化する方法を開発し、妊娠高血圧腎症の非侵襲的な発症予測や病態モニターにつなげる。令和4年度においては、まず妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の初期絨毛でDNAメチル化異常をきたしている候補遺伝子を抽出した。次に初期絨毛の候補遺伝子のDNAメチル化異常を妊娠初期の血漿中遊離核酸から検出する方法をデジタルPCRで確認した。今後この初期母体血液から候補遺伝子のDNAメチル化異常を検出する方法で妊娠高血圧腎症の発症予測の有効性を評価していく。この研究成果により妊娠初期の母体血漿cfDNA中の遺伝子のメチル化解析により妊娠高血圧腎症のハイリスク妊婦を検出可能となる。妊娠高血圧腎症発症の要因としてDNAメチル化に着目し、初期絨毛の機能を評価することで不明な妊娠高血圧腎症の病態理解に貢献するものであり、非侵襲的な妊娠高血圧腎症における発症予測と妊娠経過中の管理方法の確立に大きく貢献するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度において妊娠高血圧腎症を発症する妊婦の初期胎盤においてDNAメチル化異常をきたしている候補遺伝子の抽出を行い、早期妊娠高血圧腎症を発症した妊婦より抽出した絨毛と正常に経過したコントロール絨毛を対象にRRBSでDNAメチル化変化をプロファイリングした。さらに早期妊娠高血圧腎症を発症する群において正常群と比較して高DNAメチル化となっているプロモーター領域をもつ遺伝子を抽出してきた。令和5年度においてはこれらの候補遺伝子のプロモーター領域のCpGサイトのDNAメチル化率をMethyLight法で解析をしている。そのため現在、妊娠初期の母体血液中のDNAメチル化率を用いた妊娠高血圧腎症の発症予測方法の有効性を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
バイオーマーカー候補遺伝子のメチル化異常が初期の胎盤形成に与える影響を明らかにすることを目標としている。そのためにヒト胎盤幹細胞に対してsiRNAを用いたRNA干渉法により特異的に遺伝子発現を抑制した後に絨毛外性栄養膜細胞および合胞体性栄養膜細胞へと分化および培養を行う。ポストゲノム解析として遺伝子発現の解析を実施するとともに、培養後の組織片を免疫組織学な検討を行う。これらの検討によりバイオマーカー候補遺伝子が妊娠高血圧腎症の発症の起源となる胎盤形成異常を引き起こすことを明らかにする。作製された候補遺伝子がそれぞれノックダウンされたヒト胎盤幹細胞は環境因子(母体喫煙、栄養、薬剤など)による胎盤への影響を判断する薬物毒性評価に有用である。遺伝子改変をおこなったそれぞれの細胞から誘導されたミニ胎盤(胎盤をモデル化したオルガノイド)を用いて、環境由来物質や妊娠高血圧腎症の発症予防のためのアスピリンなどが妊娠高血圧腎症を発症する初期胎盤に与える影響を明らかにし、個別化した妊娠高血圧腎症の予防法の開発およびモニタリングが可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品の納入時期が遅れたため購入価格が減少した。次年度に実験試薬購入の一部に充てる。
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