研究課題
子宮頸癌前がん病変(子宮頸部上皮内腫瘍、以下CIN)において高発現しているヒトパピローマウイルス(HPV)E7蛋白質を標的とした免疫療法を開発中である。本研究では、この免疫療法の効果を増強するための戦略を検討することを目的とした。免疫誘導のための癌ワクチンとして、E7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7を開発したが、この薬剤の効果を最適にする条件は既に検討済みであり、薬剤側の効果増強は期待できない。そこで効果が高い患者を抽出し患者側を層別化することを考えた。CIN病変の層別化と、宿主免疫環境の層別化によって、本薬剤の薬理効果であるE7特異的免疫応答が惹起されやすい患者を選択するが効果増強につながると考えた。本研究では、IGMKK16E7の第I/II相医師主導治験に参加した患者の治療薬投与前のCIN2もしくはCIN3の局所の様々な因子をmRNAレベルで測定し、患者の個別化を行うことを行っていた。本年度は、子宮頸癌の前癌病変である子宮頸部高度上皮内腫瘍CIN2-3に対して、新規治療薬IGMKK16E7を用いたHPV標的粘膜免疫療法の第I/II相医師主導治験の登録を終了した。本治験の症例登録は、2019.6月から開始され、目標症例数として設定された164例の登録を2021年12月に終了した。2年半で全登録を終了し、現在、最後の登録症例の治験薬服用とその後の追跡を行った。患者個別化のためのコンパニオン診断として、HPV16E7のmRNA測定系の確立、免疫チェックポイントの測定系の確立、その他の免疫抑制分子の抽出を行った。これらのうちからコンパニオン診断方法が選択できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
IGMKK16E7の医師主導治験は165例の目標登録数に到達し、最終投与患者の追跡期間に入っている。6月には追跡期間を終えて、データクリーニングおよびデータ固定を行う。7月にはキーオープンして投与薬が判明する。それまでに、コンパニオン診断になりうる候補因子の発現量を調べるために、投与前のCIN病変の細胞集塊から抽出したRNAを用いた定量RT-PCRを樹立している。R3年度に候補因子(HPV16 E7、PD-L1、PD-1、Foxp3、等)を選定し、RT-PCRの系をほぼ樹立した。キーオープンに向けてRT-PCR測定を行う予定である。
165例の治験登録患者の臨床検体(子宮頸部病変の擦過細胞)はすべて回収できている。これらの検体からtotal RNAを抽出し、候補因子のRT-PCRを行い、それらの結果とIGMKK16E7の臨床効果との相関を解析する。治療薬の有効性と相関のある因子の抽出、もしくは因子の組み合わせ(スコアリング)を行う予定である。コンパニオン診断の候補が決定されたら、特許を申請する予定である。さらに2023年度に第III相試験を計画していることから、その際に本研究で抽出された因子についての検証を行う。
第I/II 相医師主導治験の165例の登録が終了するまでは発現解析ができない状況であり、多施設からの臨床検体の収集がR4年1月から開始した。そのため、検体処理、RT-PCRに必要な消耗品の使用はR4年度に繰り越さなければいけない状況となった。このため、主たる経費である遺伝子発現解析にかかる費用はR4年度に使用することを考えている
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