研究課題/領域番号 |
21K09558
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
意元 義政 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (50418703)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 好酸球性副鼻腔炎 / 短鎖脂肪酸 / 鼻粘膜上皮細胞 / 好酸球 |
研究実績の概要 |
これまでに鼻内内視鏡手術を行った患者の鼻茸及び鉤状突起粘膜を採取し、組織中のトロンビン量についてThrombin-anti-thrombin complex(TATc)を測定した。その結果、鉤状突起粘膜と比較して鼻茸中のTATc濃度は上昇しており、特に好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸で高い傾向であることを見出した。また好酸球性副鼻腔炎患者由来の鼻茸組織ではCCL26/Eotaxin-3、アナフィラトキシンである補体C3a及びC5aの濃度が高いことを見出した。組織中のTATc、C3a、及びC5a濃度はそれぞれ有意な相関を認め、組織中のトロンビン濃度と補体C3aとC5aが好酸球性副鼻腔炎の病態形成に関連していることが示唆された。 鼻茸組織からmRNAを抽出し、それよりcDNAを合成し、鼻腔組織中のTSLPのmRNAについてreal time-PCR法で検討した。その結果、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸では、非好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸と比較して、TSLPの発現量が有意に高いことを見出した。次に正常気道上皮細胞(Normal Human Bronchial epithelial cells:NHBE細胞)にpoly(I:C)を作用させるとTSLPが誘導され、短鎖脂肪酸を前処理するとTSLPの誘導が濃度依存性に抑制されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで鼻茸組織中の凝固系の指標としてトロンビン(TATc)を測定し、好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎の病態を分ける分子として補体(C3a、C5a)が凝固系と関連することを見出すことができた。現在他の凝固因子や好酸球炎症関連分子についても測定を行っている。短鎖脂肪酸の機能解析については、TSLP以外にもCST-1やALOX-15といった好酸球性副鼻腔炎に重要な分子の発現への影響についても現在検討している。上記結果を見出せており、進捗状況は概ね計順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は鼻腔組織中の凝固因子や線溶系因子についてと、鼻茸中のサイトカイン量についても検討し、好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎とで比較していく予定である。またNHBE細胞以外にも鼻線維芽細胞について短鎖脂肪酸の機能解析を順次行っていく予定である。
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