研究課題/領域番号 |
21K09570
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
武田 湖州恵 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (80345884)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | チロシンキナーゼ / RET / がん / ペプチド |
研究実績の概要 |
多くのチロシンキナーゼ阻害剤が甲状腺がんを含むがんの分子標的療法に用いられている。しかし、その作用機序は非常に似通っており、全く機序の異なる薬剤はほとんどないのが現状である。 これまで我々は、甲状腺がんをはじめ複数のがんの発症に関与するRETチロシンキナーゼの活性を、従来の阻害剤とは全く異なるシステインを介した機序により制御できることを明らかにしてきた。 本研究では、RETキナーゼをこの新しい機序を介して阻害するペプチドを用い、分子標的療法を開発することを目的としている。 これまでに、主に甲状腺がんを引き起こすRET-PTC1、及び既存のATP結合阻害剤が効きにくい遺伝子変異RET(特にゲートキーパー変異を持つRET)に対して、阻害ペプチドの有用性を報告した。本年度は、ゲートキーパー変異を持つRETを発現した細胞の増殖に対する阻害ペプチドの効果を、さらに調べるため、変異RETと阻害ペプチド遺伝子の恒常発現細胞を作製した。発現が十分得られた複数のクローンで、RETの活性の指標である905Yのリン酸化及びRET下流シグナルであるERKのリン酸化が低下していた。その結果、これらの細胞の増殖も抑制されていた。 また、これまで阻害ペプチドは、細胞・動物モデルいずれにおいても、発現ベクターを遺伝子導入する方法でその有効性を検討してきた。本研究では、阻害ペプチドを細胞内へ直接投与する方法の検討を継続している。膜透過性ペプチドとの融合により、細胞に直接ペプチドを導入できることが確認でき、細胞内でRETの活性の抑制が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であった阻害ペプチド投与方法の検討については、ほぼ予定通り進んでいる。一部、既存の薬剤との比較・併用の検討については進展があまりみられていない。
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今後の研究の推進方策 |
阻害ペプチドの細胞内への投与法は、これまでに有望であった方法についてさらに研究を進め、より効果のあるペプチドの同定を行いたい。また効果の持続の程度を確認し、RET活性抑制だけでない、細胞機能の変化についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は実験が効率よく進み、支出が予定よりやや少額となった。 今後も細胞内へのペプチドの投与を継続する予定であり、そのためのペプチド合成(外注)に予算を使用する予定である。また研究を迅速に進めるためには、さらに研究補助員の労力が必要である。
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