研究実績の概要 |
スギ花粉症は日本の人口の4割に認められる国民病で、根治的治療法の一つである舌下免疫療法(Sublingual immunotherapy: SLIT)は、2014年に本邦で保険適用の治療となり、2023年には政府の花粉症に関する関係閣僚会においても、倍増計画を目指すことが発表された注目される治療である。SLITは高い有効性を示すが、20-30%において治療抵抗性を示す症例がみられ、さらに、治療効果判定を判定するためには2年を要し、その判定基準は未だ確立されておらず、スギSLIT抵抗症例を判定するためのバイオマーカーの確立が急務とされている。本研究では、動物実験においてアレルギー疾患のバイオマーカーとして報告されているCD4+T細胞に発現するCX3CR1に注目し、スギSLIT無効症例に対するバイオマーカーの臨床応用を目指した。 方法は、関西医科大学香里病院を受診したスギ花粉症患者14名に対し、スギSLITを導入し、治療効果の評価を行った。具体的には、スギ花粉飛散期、非飛散期の測定ポイントで患者の末梢血を採取し、末血好酸球数、およびフローサイトメトリーを用いてCD4+T細胞におけるCX3CR1の発現を測定し、さらにSLITの効果を反映する指標の一つであるTregやIL4,5,13,22,25,IFNγ、TNFαなどの発現も測定し、血清より血清総IgE値、スギ抗原特異的IgE値、IgG4値の変動を測定した。また、スギ花粉飛散期に鼻アレルギー診療ガイドラインに従って、患者の自覚症状や、QOLを調査し、治療前後で比較した。SLIT有効例と無効例においてCX3CR1の発現および飛散期前後の変異量に有意な差異はみられず、現段階ではバイオマーカーとはなり得ないが、今後他のサイトカインとの関連をさらに検証していく予定である。
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