研究課題
本研究の主目的は、頭頚部扁平上皮癌におけるprotein tyrosine phosphatase non-receptor type 3 (PTPN3)分子の生物学的意義を解析し、PTPN3分子が頭頚部扁平上皮癌に対する1) 診断補助因子、2) 予後予測因子、および3) 治療標的分子となり得るかを検証することである。昨年度までの実験で、、PTPN3が頭頚部扁平上皮癌の治療標的分子となる可能性がでてきたので、本年度は、PTPN3が頭頚部扁平上皮癌において増殖、遊走、浸潤に及ぼしている影響のメカニズム解析を行った。PTPNはチロシン脱リン酸化酵素であるため、本来はPTPN3を抑制するとチロシンキナーゼリン酸化が亢進し、細胞は活性化する方向へ形質が変化するはずであるが、実験では逆に、PTPN3抑制によって、癌細胞悪性形質が抑制される結果となっている。そこで、PTPN3抑制癌細胞とコントロール癌細胞を用いて、マイクロアレイ解析を行ったところ、頭頚部癌ではPTPN3とチロシンキナーゼリン酸化との間に、lipocalin 2(LCN2)という分子が介在している可能性が分かってきた。すなわち、頭頚部癌ではPTPN3を抑制すると、LCN2発現が亢進し、それがPTPN3本来のチロシンキナーゼ脱リン酸化作用を凌駕して作用している可能性がある。今後は、今回見出したPTPN3-LCN2-チロシンキナーゼリン酸化経路の解析を行い、頭頚部癌の病態解析および新規治療法開発を行っていきたい。また、public dataを用いた予後解析においては、PTPN3高発現の症例は低発現の症例と比較し、全生存、無病生存ともに悪い傾向を示しており、予後解析結果もPTPN3を頭頚部癌の新規治療標的として矛盾しない結果となっている。
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