研究課題/領域番号 |
21K09584
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
立山 香織 大分大学, 医学部, 助教 (00771958)
|
研究分担者 |
平野 隆 大分大学, 医学部, 講師 (20305056)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ANCA関連血管炎性中耳炎 / 中耳貯留液 / 自己免疫性中耳炎 |
研究実績の概要 |
抗体好中球細胞質抗体(ANCA: anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎性中耳炎(OMAAV: otitis media with ANCA associated vasculitis)は、自己免疫を機序とする難治性中耳炎である。主にPR3 (proteinase3)-ANCA、MPO(myeloperoxidase)-ANCAが主要抗原となり、病態と関わっていることが分かっているが、疾患発症のメカニズムや、中耳おける病態は未だ不明な点が多い。ANCAは、炎症局所の場である中耳にも発現している可能性があると考えた。 OMAAV16症例(48歳-82歳、平均70歳、男性6名、女性10名)の治療前、または経過中に得られた中耳貯留液上清中におけるPR3-ANCA、MPO-ANCAをELISAキット(ANCAcombi:Orgentec社, Germany)にて測定した。OMAAV16症例の血清ANCAは、MPO-ANCA陽性11例、PR3-ANCA陽性4例、両ANCA陰性1例であった。血清ANCA陽性例は16例中15例(93.7%)であるのに対し、中耳貯留液中ANCA陽性例は16例中12例(75%)であった。中耳貯留液中のANCA陽性例は、血清MPO-ANCA陽性例11例中10例(90.9%)、血清PR3-ANCA陽性例4例中2例(50%)に認めた。血清ANCA陽性例15例中12例(80%)に血清ANCA同一のANCAを中耳貯留液中にも認めた。 血清と中耳貯留液中のANCAのタイプは高率に一致した(一致率81.2%)。ANCAを含んだ血清成分が中耳腔へ漏出し、難治性中耳炎を誘導している可能性がある。本研究結果は、OMAAVが自己免疫性中耳炎である病態を裏付ける結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己抗体を測定する各種試薬は血清用であり、中耳貯留液には適さない可能性もあるが、問題なく測定できた。今後も最適な希釈濃度を模索し測定を行い、データの再現性を確認する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
中耳貯留液中の炎症局所で産生されるサイトカインの解析によって、治療標的となりうるサイトカインについて検討する。中耳におるANCA産生の機序が明らかとなると同時に、中耳貯留液中のサイトカインネットワーク動態の解析によって、既存のIL-6阻害薬などのサイトカインを標的とした治療薬がANCA関連血管炎性中耳炎でも適応となる可能性を示す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験室消耗品や試薬が充足していたため、来年度消耗時の購入費用に充てる予定である。
|