研究実績の概要 |
頭頸部癌細胞におけるPD-L1発現とTorinによるmTOR阻害による影響:低酸素条件下で培養した頭頸部癌細胞株では、プラチナ・タキサン・5-FU抗癌剤投与にて、PD-L1発現が上昇した。さらに同様の現象をTorinによるmTOR阻害によって生じることを証明した。PLD阻害薬は臨床容量では頭頸部癌細胞への影響は少なかった。一方,TorinとてmTOR阻害薬のエベロリムスは臨床容量では有意に頭頸部癌の増殖を抑制した。さらにTorinとエベロリムスを併用することにより,臨床容量よりもさらに低濃度で増殖を抑制 することが確認出来た。この濃度条件を用いて,in vivoアッセイを実施した。免疫不全マウスに頭頸部癌細胞株を皮下投与した。4週間の間に3回薬剤投与を行ったところ,有意に腫瘍増殖を抑制 することに成功した。本研究期間の間に,Torin, PLD阻害薬,mTOR阻害薬を用いて,各種細胞株の増殖抑制を検討した。これにより副作用の少ない臨床容量でも,薬剤の組み合わせを工夫することよって頭頸部癌細胞を効率的にアポトーシスへ導き,in vivo研究でも有用性が期待できる結果を得ることができた。HPV感染の有無とその効果については一定の結果を得られなかった。一方,siRNAによるRaptor,Rictorのノックダウン研究はまだ途中の段階であった。ヒト頭頸部癌標本の検討では,HIF-1α,Raptor,Rictorの発現と予後の関連を解析し,データを検討中である。また,研究中に低酸素条件がTorinやmTOR阻害薬の効果を変化させることが確認されたため,新たな実験系を作成しその関係を検討している。
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