研究課題/領域番号 |
21K09587
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
波多野 芳美 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (90792672)
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研究分担者 |
江崎 伸一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (20620983)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 単純ヘルペスウイルス / 腫瘍溶解ウイルス / 転移性腫瘍 |
研究実績の概要 |
頭頸部扁平上皮癌の大半は進行癌で見つかることが多く、進行癌は治療後も局所再発や遠隔転移することが多い。再発、転移した腫瘍は従来の治療に抵抗性を示すことが多く、有効な治療選択肢が限られていて、新規治療法の確立が望まれている。 腫瘍溶解ウイルス療法は接種したウイルスが腫瘍細胞を破壊しながら増殖して、増殖したウイルスが周囲に感染してさらに腫瘍を崩壊させていくことをコンセプトにした治療法である。また近年になり、腫瘍溶解ウイルス療法は抗腫瘍免疫を増強することも判明してきた。名古屋大学医学部ウイルス学講座では、自然発生型の弱毒型単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1)からHF10をクローニングし、HF10が多くの癌細胞株で増殖性が非常に高く、担癌モデルマウスにも優れた抗腫瘍性を示すとともに腫瘍細胞特異的な腫瘍免疫を誘導することを報告してきた。 頭蓋内、肺内など遠隔臓器に転移した腫瘍は、腫瘍溶解ウイルスを直接接種することが困難であることが多い。しかし、接種可能な腫瘍に腫瘍溶解ウイルスを接種することにより抗腫瘍免疫を賦活化し、遠隔臓器に転移した腫瘍を制御できれば、遠隔転移した腫瘍への新たな治療選択肢となる可能性が考えられる。そこで本研究では腫瘍溶解ウイルス療法が遠隔転移腫瘍の成長を抑制することができるかを検討することを目的とする。本研究では複数臓器に腫瘍を同時に作成し、重複癌モデルマウスを作成する。一つの腫瘍のみウイルスで治療した際に他の腫瘍が縮小していくかを検討する。腫瘍溶解ウイルス療法が局所接種した腫瘍だけでなく、遠隔転移腫瘍の制御を示すことを示すことができれば、腫瘍溶解ウイルスの新たな可能性を示すことができる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、背部両側皮下腫瘍モデルを作成し、片側の腫瘍のみ腫瘍溶解ウイルスにて治療を行ったところ、両側とも腫瘍の縮小効果が得られた。 他のモデルとして脳腫瘍、舌腫瘍を同時に有する遠隔転移腫瘍モデル動物の作成し、舌腫瘍にHF10を接種したところマウス生存延長効果が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
免疫学的検討を行うため、当初の計画通り免疫組織化学的検討、免疫細胞の組成の変化の検討、腫瘍特異的免疫の検討を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
担癌動物モデルマウスの安定的な作成のために、時間を要した。当初の想定より時間を要したため、次年度に実験を行う予定である。
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