研究課題/領域番号 |
21K09588
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡安 唯 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10596810)
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研究分担者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60364072)
細井 裕司 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (80094613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨導超音波 / 聴力検査 / 人工内耳 |
研究実績の概要 |
また、本研究では重度難聴者でも聴取可能な骨導超音波を利用し、聴力を評価することで人工内耳の効果を予測することができる新しい検査システムを開発することを目的とする。2021年度は骨導超音波を利用した語音検査を開発するために、母音の刺激長と語音弁別の関係について研究をまとめ、日本聴覚医学会で発表を行った。骨導超音波「ハ」の母音の刺激長を20msごとに変化させ「ハト」もしくは「ハート」に聞こえる刺激を作成し、どちらに聞こえたかを強制的に選択させる課題を起こなった。境界閾値(50%の割合で「ハート」と認識する刺激長)と境界域(75%の割合で「ハート」と認識する刺激長から25%で認識する刺激長を引いた差)を求め、比較した。骨導超音波語音の境界閾値はともに260-280 msの間であり、骨導超音波語音であっても母音の刺激長の変化による語音の弁別が可能であることが示された。このことから検査として有用であること考えられた。またこの成果を論文として発表した。Okayasu, T. et al. Word Categorization of Vowel Durational Changes in Speech-Modulated Bone-Conducted Ultrasound. Audiol. Res. 2021, 11, 357-365. また、動物実験では小動物用の耳音響放射の検査機器を導入し、骨導超音波知覚に外有毛細胞が関与するかどうかについての研究をすすめる手段が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ややおくれているものの研究成果を論文として発表できた。人工内耳手術前後の患者の聴力検査のための研究は現在倫理員会で審査中で、審議が通れば、開始ができる見込みである。また、骨導超音波知覚メカニズムを調べる実験についてはOAEも導入し、動物実験を行う準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には今後人工内耳を行う患者に対しても、術前、術後に骨導超音波による検査を開始し、術前の検査結果が、術後の結果の予測に役立つかどうかを前向きに確認する。予定では年間5-10例程度の前向きの症例を得ることができると考える。なおCOVID-19等の感染防止の観点から、対象者は当院の通院患者とし、院内の感染防止基準にしたがって検査を行う。 動物実験ではモルモットを用いてシスプラチンを投与して外有毛細胞を障害させたモデルとカルボプラチンを投与し、主に内有細胞を障害させたモデルについて聴性脳幹反応(ABR)とOAEを測定し、また、障害モデルの内耳を病理学的に調べることで、どのような障害部位の難聴であれば骨導超音波が聞える or 聞こえないのかを明らかにすることで、骨導超音波の内耳での知覚メカニズムについて検証するとともに骨導超音波による検査が適応となる内耳障害を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究の遅れにともない、次年度に費用の繰り越しをおこなったが、承認にともない、研究費用が必要になる。動物実験については引きつづき検査機器の使用について費用を払う。
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