研究課題/領域番号 |
21K09589
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
楠 威志 順天堂大学, 医学部, 教授 (30248025)
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研究分担者 |
中川 大 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (40397039)
豊田 優 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 分子生体制御学, 講師 (80650340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ABCC11遺伝子多型 / 耳垢 / 中耳真珠腫 / 外耳道内pH環境 / 細菌叢 |
研究実績の概要 |
ABCC11遺伝子多型(538G>A)が耳垢の性状(湿性もしくは乾性)を決定することがYoshiuraら(Nat Genet,38:324‐330,2006)によって報告された。ABCC11 538AAが乾性耳垢に対応し、538GG/GAが湿性耳垢に対応する。耳垢成分は、外耳道アポクリン腺(皮脂腺と耳垢腺)の分泌物と外耳道上皮から成る。これまでに申請者らは、ABCC11遺伝子型に基づく耳垢の乾湿の違いが中耳真珠腫の発生リスクに影響を与える可能性を検討し、適宜症例を増やし、その結果、中耳真珠腫症例群では、健常者群と比べて有意に湿性耳垢の割合が高いことを見出した。また申請者らは、中耳真珠腫発症リスクと関連する外耳環境因子の一つとして、耳垢のpHに着目している。今回、ABCC11遺伝子の多型に基づいて耳垢を湿性および乾性に分別し、耳垢を懸濁させた水溶液のpHを測定したところ、湿性耳垢ではpH 5.40、乾性耳垢ではpH 5.15という結果が得られ、湿性耳垢の方が有意に中性寄りであった(p < 0.01)。さらに興味深いこととして、耳垢pHが中性寄りの程度と、中耳真珠腫病期分類の進展度と有意に相関関係がみられた。 以上の結果を糸口として、耳垢を含む外耳道内の環境に着目した申請者らは、「pHの偏り、あるいは、それに伴う真菌を含めた微生物叢の変化が中耳真珠腫発症リスクに関与するのではないか?」という仮説を設け、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍はまだ完全に終息していないが、中耳真珠腫の手術件数は回復しつつあり、対象となる検体は十分増えてきている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の如く、申請者らは、中耳真珠腫リスクと関連する外耳環境因子のひとつとして、耳垢のpHに着目している。外耳道に棲む微生物の同定をMinamiらの方法 (Laryngoscope, 127,E371-E377,2017.) とZhangらの方法(Am J Otolaryngol. 41, 102340-102345, 2020)を参考にしてrDNAを解析が可能となった。それにより具体的には、外耳道擦過物や耳垢から細菌および真菌を選別・培養し、それぞれのゲノムDNAを抽出した後、rDNA配列の解析を行う。 予備的検討ながら、中耳・外耳炎症例において分離された真菌Malazzeziaは、湿性耳垢が存在する耳から多く検出される可能性を研究協力者が見出している。以上の報告を糸口として、耳垢を含む外耳道内の環境に着目した申請者らは、「pHの偏り、あるいは、それに伴う細菌叢の変化が中耳真珠腫発症リスクに関与するのではないか」という仮説を設け、検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は発生したが、対象となる検体数も増えてきており、研究費の使用に関して概ね計画通りである。今後は、得られた検体からゲノムDNAを抽出し、解析を行うために必要な試薬消耗品の購入、および研究打合せや成果発表のために使用する予定である。
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