研究課題/領域番号 |
21K09601
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 弥生 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (00452350)
|
研究分担者 |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40334370)
木下 淳 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10755648)
藤本 千里 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60581882)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 内耳 / 前庭 / 平衡覚 / 耳石 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により研究責任者の対応が遅れ、また動物実験が制限されたため一部研究の実施が困難な状況となったが、連携研究者により内耳再生および前庭組織の安定性について実験を行うことができたのでその結果を述べる。 方法:血管系の構築(embryonic angiogenesis)に必要なLIM-only protein 2(LMO 2)の転写因子Lyl1を全身に過剰発現させたトランスジェニックマウスを用いて、前庭組織(卵形嚢及び球形嚢)における血管分岐様式の検討を行った。また、実際に低酸素環境での器官培養を行い、化学的低酸素負荷への応答についてワイルドタイプと比較検討を行った。低酸素負荷を再現する薬剤としては鉄のキレート剤であるDFX(Desferrioxamine mesylate salt)を使用し、内耳障害を与える薬剤としてゲンタマイシン(GM)を使用した。DFX1日投与後にGMを1日投与し、その後通常培養液で培養した。培養終了後に器官を4%PFA(パラホルムアルデヒド)で固定し、透過処理したのちファロイジン488で染色し感覚毛数をカウントした。結果:Lyl1過剰発現マウスでは、DLL4の分泌が減少し毛細血管が過剰に分枝することが明らかになった。また、低酸素負荷障害モデルにおいて、DFXはin vitroの実験において前庭有毛細胞に対して濃度依存性に障害を与えるが、一部の濃度ではゲンタマイシン障害後の有毛細胞の残存数が増加しており、内耳保護的に働く可能性があることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により研究責任者の対応が遅れ、また動物実験が制限されたため、実験は困難であった。学会に出席し情報収集に努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこの器官培養系を用い、耳石安定化薬剤の候補としてスタチンなどを用いた検討を行っていくが、京都大学再生研究所田畑教授に教示いただいた多血小板血漿(PRP)の内耳投与の可能性についても引き続き検討を続けていく。PRPとは、患者自身の血液から血小板濃度を通常の血液の約3~7倍に濃縮したもので、抗炎症性サイトカインとPDGF、FGF、EGF、VEGF、TGF-βなどの成長因子が濃縮されている物質である。また、耳石の密度や硬度の測定法についても検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により研究責任者の対応が遅れ、また動物実験が制限されたため研究実施が困難であった。次年度以降に実施する。
|