研究課題/領域番号 |
21K09608
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岡田 昌浩 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20512130)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 聴覚障害 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎えた今、認知症の予防・治療は喫緊の課題である。これまでの疫学調査から、難聴が認知機能低下の後天的因子として重要視されている。難聴と認知機能低下との関連のメカニズムについて、現在、難聴が中枢に影響を与え認知機能を引き起こす説、あるいは難聴と認知機能低下が共通の病因により引き起こされる説などが提唱されているが詳細は明らかではない。これまで、難聴により海馬領域などの中枢に変化が見られることは報告されている。しかし、認知機能低下の素因を持つモデル動物において、内耳にどのような変化が生じるか、詳細は明らかではない。。蝸牛には上位中枢から上オリーブ複合体を経た神経線維が投射している。この遠心性経路は注意の集中のような過程で感覚入力を修飾していることが判っているが、不明な点も多い。Libermanらは、この遠心性経路を遮断することでCochlearsynaptopathyを生じることを報告した。この結果から、遠心性経路の障害、つまり、中枢障害が聴覚障害をも引き起こす可能性を示唆している。そこで、認知症の原因疾患で最も多いアルツハイマー病と脳血管障害に着目し、このような疾患のモデルマウスで聴覚障害が生じるかどうかを検討する研究を着想した。検討の結果、脳血管障害モデルを用いた動物が安定した結果が得られたので、脳血管障害モデルを用いて研究を行った。 後交通動脈が欠損したスナネズミを用い、両側総頚動脈の血流を遮断することで、大脳の虚血を引き起こすことを確認した。虚血は5分および10分で施行した。虚血後4週時点では、聴力(ABR閾値)は5分・10分虚血ともに変化しなかった。ABRのI波の振幅はやや減少している傾向にあったが、有意な差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、脳血管障害モデルおよびアルツハイマー病モデルマウスを用いる予定であった。モデルの安定性から、脳血管障害モデルに絞って研究を行うこととした。モデルの選定後、ABRの閾値変化や振幅の変化の検討を行えており、今後は、モデルの経過観察期間などを検討する予定で、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
対象とするモデルの選定が終わり、今後は、ABRを用い、閾値変化や振幅の変化がどの時点で引き起こされるのかを検討する必要がある。経過観察期間の設定が終われば、組織学的な評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究にかかる動物(スナネズミ)が繁殖できたため、購入費が節減できた。次年度に試薬や物品の購入、論文投稿費などとして使用する予定である。
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