研究実績の概要 |
われわれが以前から確立しているヒト唾液腺腺管上皮細胞の培養系を用いて、タイト結合分子の中でも特にcytokinesisにおけるlipolysis-stimulated lipoprotein receptor (LSR)およびtricellulinに着目して、その発現メカニズム、アポトーシスとの関係について検討を進めている。これまで2細胞間タイト結合分子であるoccludin, claudin-7, zonula occludens-1 cingulinや極性に関与するPAR3が、cytokinesisにおいて発現増強し、上皮バリア機能も保たれ、LSRやtricellulin がアセチル化チューブリン陽性中央体やガンマチューブリン陽性中心体にHook2とともに認められた。Hook2をノックダウンすると上皮バリア機能低下や関連分子の発現が中心体から消失した。LSRの多様な機能が示唆されている。アポトーシスとの関連については、現在検討中である。また、得られたヒトIgG4関連疾患組織(唾液腺)の解析から、活性化した胚中心型のSP-Tfh細胞が病変部においてIL-2やIL-7による刺激を受けることで、一部がDP-Tfh細胞に分化する可能性が示唆されている。DP-Tfh細胞は主に自身のメモリーB細胞に対して細胞傷害能を発揮し、メモリーB細胞からの抗体産生を抑制する機能があると考えられることから、IgG4関連涙腺・唾液腺炎の病変部においては、DP-Tfh細胞は病勢の収束に寄与する細胞である可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
検体入手を進めつつ、以下の検討を進めていく。 1)各種サイトカインのGBP-1・上皮バリアへの影響:TNFα,IL-1β,Th1およびTh2サイトカイン,制御性T細胞産生サイトカイン)のGBB-1への影響を確認していく。疾患由来の細胞においてタイト結合関連分子(occludin, claudin-1, -4, -7, JAM-A, LSR, tricellulin)の発現変化と,経上皮電気抵抗(TEER)による上皮バリア機能の変化を調べる。 2)シグナル伝達経路の解析:GBP-1に影響するシグナル伝達経路を明らかとする。siRNA法や各種インヒビターを用いてシグナル伝達経路について解析を進めていく。 3)GBP-1 knockdownによる上皮バリアおよびサイトカインへの影響:GBP-1をknockdownすることで,タイト結合関連分子(occludin, claudin-1, -4, -7, LSR,Tricellulin)の発現変化と上皮バリア機能の変化,各種サイトカイン(TNF調節因子,IL-1β,Th1およびTh2サイトカイン,制御性T細胞産生サイトカイン)処置時の変化について解析する。 4)リンパ球、特に濾胞ヘルパーT細胞の病態への関与について、FACS、ELISAを用いて検討を行う。
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