研究課題/領域番号 |
21K09611
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
今泉 光雅 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (30554422)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 嚥下スクリーニング調査票の最適化 / 被災地域在住高齢者 / 潜在的な嚥下障害 / 実践的な介入モデルの開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災後10年を経過した慢性期における福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害を調査・分析し、介入体制を構築することにより、被災地域における継続性を維持した嚥下障害に対する実践的な介入モデルを開発することを目的としている。前年度は、被災地域における老人会参加者や老人ホーム等の高齢者施設在住者を対象として、合計75名に対する嚥下障害調査を実施した。今年度は新型コロナウイルス対策として、ウイルス感染が停滞すると想定される夏期に、複数施設において調査を実施予定であった。しかしながら、これまでの規模の中で最大となる新型コロナウイルス第7波が蔓延したため、現地調査は全てキャンセルとなり、その後の現地調査も拒絶されることとなった。 当初は、東日本大震災の慢性期における高齢者の潜在的嚥下障害に対する実践的介入モデルとして、調査票による嚥下スクリーニング後、現地での内視鏡検査の実施を想定していたが、ウイルスの飛散及び感染リスクが高いと想定される嚥下内視鏡検査を選択することが困難となった。今後も同様の状態が継続することが想定されたため、これまでに得られた結果及び、福島県の高齢者施設において実施した嚥下内視鏡検査結果を照らしあわせ、新型コロナウイルス蔓延下でも、容易かつ適切に嚥下障害の有無を診断可能な方法として、日本及び世界で広く使用されている嚥下スクリーニング調査票の最適化を試み、実践的な介入モデルの開発を進めた。嚥下障害及び喉頭侵入の早期発見に対して、統計学的に有意な質問項目は認めなかったが、誤嚥性肺炎に直結する誤嚥の有無に関しては、「食べる喜びが飲み込みによって影響を受けている」、「飲み込む時に食べ物がのどに引っかかる」、「飲み込むことはストレスが多い」、を統計学的に有意な質問項目として選定でき、現在の日本の感染状況にも対応する介入モデルの開発につながる成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災後の慢性期における、福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害に対する現地調査を今年度も引き続き予定していた。コロナワクチン3回目接種後は感染が減少すると想定されていたが、新型コロナウイルス第7波のため、今年度実施予定であった現地調査は全てキャンセルとなり、その後の調査も拒絶されることとなった。当初は、実践的介入モデルとして、調査票による嚥下スクリーニング後、現地での内視鏡検査の実施を想定していたが、コロナウイルス感染リスクが高いと想定される嚥下内視鏡検査を選択することは困難な状況が継続していた。そのため現地調査としての目標人数への到達は困難となった。しかしながら、これまでに得られた結果を分析し、最適化された嚥下スクリーニング調査票により実践的介入モデルの開発を試みることで研究を推進する方策とした。高齢者施設でこれまでに得られた結果を利用し、内視鏡を用いずとも最適化された質問項目を選定することができた。当初予期していなかった新型コロナウイルス感染が持続しているが、簡易かつ少ない質問項目により、誤嚥性肺炎の早期発見方法を見出すことが可能となったことより、進捗状況はやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
被災地域における高齢者の嚥下スクリーニングを効果的に実施するには、高齢者施設在住者を対象者として優先する必要がある、という重要な知見が初年度に得られた。今年度は、新型コロナウイルス蔓延下でも導入可能な介入モデル開発のために、これまでの結果および嚥下内視鏡結果の分析をした。質の高いスクリーニング調査票の開発のために、調査票の質問項目毎の回答率を調査し、質問項目毎のカットオフ値・AUCを算出した。「食べる喜びが飲み込みによって影響を受けている」、「飲み込む時に食べ物がのどに引っかかる」、「飲み込むことはストレスが多い」の質問項目が効率よく、誤嚥を早期発見できることをつきとめた。 現地調査で得られた結果に対して、今回得られた結果を照らしあわせ、東日本大震災後10年を経過した慢性期における福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害の有無を分析する。得られた分析結果より、適切な介入体制として、老人会参加者または老人ホームに在住者に対する啓発活動が妥当であるかを結論づける。より効率的な早期発見・介入方法として高齢者施設に勤務するスタッフや行政職員または保健師に対する嚥下教育が重要であると判断された場合は、嚥下や誤嚥に関する資料を作成し、早期発見・早期介入モデルの構築の推進に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
東日本大震災後の慢性期における、福島県の被災地域在住高齢者の潜在的な嚥下障害に対する現地調査を引き続き予定していたが、新型コロナウイルス第7波のため、今年度実施予定であった現地調査は全てキャンセルとなり、その後の調査も拒絶されることとなったため、使用額に差額が生じた。更に、国内外の学会や研究会で当該研究における情報収集を予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況により中止となったため、次年度使用額が生じた。
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