研究課題/領域番号 |
21K09616
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
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研究分担者 |
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
川北 大介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70584506)
伏見 千宙 国際医療福祉大学, 大学病院, 講師 (20623531)
高橋 秀聡 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (50727196)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唾液腺導管癌 / 癌微小環境 / 自律神経 / 交感神経 / 副交感神経 / ノルアドレナリン / TH発現 / VAChT発現 |
研究実績の概要 |
唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma: SDC)は、遠隔転移の頻度が高い極めて予後不良の希少癌であるが、無作為化比較試験を経た薬物療法は確立されていない。 近年、前立腺癌、乳癌、頭頸部扁平上皮癌では、癌組織内に自律神経(交感神経・副交感神経)系が入り込み、生命予後不良因子となっていること、および、実験的に交感神経を抑制または除去した場合は、癌の縮小や転移の抑制が観察され、癌細胞と神経の相互作用を標的とした新たな治療法の開発が期待されている。しかし、SDCにおいては、癌と神経の相互作用の検討はなされていない。本研究は、SDC標本を用いて、画像解析を駆使した免疫組織化学的検索や遺伝子解析を行い、SDCの癌組織内における自律神経の臨床病理学的および分子病理学的意義を明らかにすることを目的とした。 対象は、すでに開始しているSDC多施設共同研究会登録症例である。根治治療施行例を対象として、臨床情報を収集・更新した。未染プレパラートを収集し、交感神経系マーカーであるTHおよび副交感神経系マーカーであるVAChTとCHATに対する免疫組織化学染色を施行した。得られた予後情報と、免疫組織化学染色の結果を解析し、これらのマーカーの判定基準を策定した。 根治治療施行129例において、腫瘍内のTH、VAChT、CHATの発現を免疫組織化学染色、蛍光二重染色を用いて判定した。この結果を用いて、臨床病理学的因子と末梢神経・自律神経との相関関係、および予後との関係の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多施設共同研究会に登録されたSDC症例のうち、根治治療が施行された129例において、交感神経系マーカーであるTHおよび副交感神経系マーカーであるVAChTとCHATに対する免疫組織化学染色を行い、顕微鏡100倍で3視野を選択し、画像解析ソフト(ImageJ)を用いた定量的評価が完了した。 得られた結果と、予後を統計解析し、それぞれの染色結果と予後とをもっとも反映するカットオフ値をsensitivity analysisによって算定した。 さらに、TH、VAChT、CHATの染色性と、従来の研究で得られていたHER2、アンドロゲン受容体(AR)、Ki-67、p53などのSDCにおいて、重要な臨床病理学的因子との相関関係の統計解析が完了した。 以上の結果を、日本唾液腺学会で口演し報告した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られたTH、VAChT、CHATの結果とSDC根治治療施行症例の予後データ(無増悪生存期間、全生存期間)とのsensitivity analysisによりカットオフ値が確定し、 従来の研究で得られていた臨床病理学的因子(HER2、アンドロゲン受容体(AR)、Ki-67、p53等)との相関関係の解析、および、予後との関連の解析が完了した。2023年度末までに、これらの結果を英文論文化し、投稿まで行うことを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床病理学的情報の更新に必要な試薬の使用が想定していたより少なく済んだことで次年度使用額が生じた。研究自体は順調に進んでおり、来年度には、英文論文化に必要な、英文校正料や英文投稿料などにも使用する計画である。
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