研究課題
唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma: SDC)は、遠隔転移の頻度が高い極めて予後不良の希少癌であるが、無作為化比較試験を経た薬物療法は確立されていない。近年、前立腺癌、頭頸部扁平上皮癌では、癌組織内に自律神経(交感神経・副交感神経)系が入り込み、生命予後不良因子となっていること、および、実験的に交感神経を抑制または除去した場合は、癌の縮小や転移の抑制が観察され、癌細胞と神経の相互作用を標的とした新たな治療法の開発が期待されている。しかし、SDCにおいては、癌と神経の相互作用の検討はなされていない。本研究は、SDC標本を用いて、SDCの癌組織内における自律神経の臨床病理学的および分子病理学的意義を明らかにすることを目的とした。対象は、根治治療が施行された129例である。神経マーカーのS100、交感神経マーカーとしてのTH、副交感神経マーカーとしてVAChTに対する抗体を用いて、免疫組織化学染色を行った。各マーカー陽性神経の面積をデジタル化し、定量的に評価した。一部の症例では、THとVAChTの二重免疫蛍光も施行した。129例中94例(72.9%)がS100陽性であった。このうち92/94例(97.9%)がTH、VAChTの両方または一方が陽性の自律神経陽性例を認めた。さらに、59/94例(62.8%)は、TH/VAChT共発現していた。二重免疫蛍光法により、交感、副交感神経共発現では、神経束内における交感神経線維と副交感神経線維のモザイクパターンを認めた。自律神経陽性は、発現の面積に関わらず、高悪性度、進行T/N分類と相関し、無病生存期間と全生存期間が有意に予後不良であった。また、一部の腫瘍免疫微小環境関連マーカーと自律神経の状態との間には相関を認めた。本研究では、自律神経がSDCの進行に一定の役割を果たす可能性があることが示唆された。
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