研究課題/領域番号 |
21K09618
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田中 久美子 順天堂大学, 医学部, 助手 (40836243)
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研究分担者 |
美野輪 治 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (00181967)
松岡 周二 順天堂大学, 医学部, 特任准教授 (20286743)
池田 勝久 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (70159614)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 調節性T細胞 / 自己免疫疾患 / 遺伝性難聴 / Helios / Ikzf2 / ENU-mutagenesis |
研究実績の概要 |
転写因子Heliosのミスセンス変異はマウスの難聴を誘起する。Helios は調節性T細胞(Tregs)の安定な抑制活性のために必要であり、免疫ホメオスタシスの維持には、Tregsの安定な抑制活性が必須である。内因性自己免疫反応を抑えるためにも、Tregs は安定して抑制表現型を維持する必要があり、Helios の発現に障害があれば、Tregの抑制活性が不全になり、自己免疫反応の原因となり得る。新規に発見されたHelios 変異体マウスにおける難聴が、自己免疫反応による細胞組織障害により引起こされるのか、或いはHelios の別の機能によるのかを明らかにすることが本研究の目的である。 Heliosの機能障害が、Tregに不完全な調節活性をもたらす結果としてマウス内耳の自己免疫障害を引起こすことが難聴の原因か否かを明らかにするために、本変異体内耳において自己免疫反応の存在を証明することを試みる。内耳における自己免疫反応による難聴は極めて僅かしか知られておらず、解剖学的にも限局された部位の解析を要するため、まず免疫組織化学的方法によりHeliosの発現部位について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【Helios 変異体表現型の継時的追跡】Helios変異体マウスの導入・生産を実施し、自己免疫性疾患の証拠を得る実験の準備を行った。繁殖効率の低下が観察され、変異体マウス導入及び繁殖に予定より時間を要した。これが該当遺伝子変異によるかは今のところ不明瞭である。 【Heliosの発現解析】免疫組織化学的手法に加えて、免疫蛍光法、発生過程におけるRNA in situ hybridizationによる細胞レベルでの発現追跡を含む詳細な発現解析の一環として、Helios の内耳における発現を確認するため、P0及び10週齢における野生型及び変異体内耳、脾臓と胸腺を採取し、解析を行った。免疫組織化学用の一次抗体は目下追加生産中のため入手が遅れている。RNA in situ hybridizationの結果から、胸腺における明瞭な発現が観察されたが、内耳における発現は、P0において明瞭に観察される一方、成体10週齢では著しく低下し、本転写因子の内耳細胞分化に関わる機能が推定された。
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今後の研究の推進方策 |
【Heliosの発現解析】Helios の内耳における発現解析を継続して行う。また、早期(10週例)と加齢後(6ヶ月)におけるHelios 野生型及び変異体内耳、脾臓と胸腺を採取し、組織免疫化学的方法により解析を実施する。 【内耳の自己免疫反応】少数のリンパ系細胞の螺旋神経節軸索部分への浸潤、螺旋神経節から中枢への軸索部におけるカルシウム沈着痕、螺旋神経節周辺の軽微な浮腫の有無の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大による世界情勢の影響から、予定していた機器備品や一部試薬の納品が大幅に遅延となったため次年度使用額が生じたが、その他予算の使用については概ね計画通りであった。
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