扁平上皮がんは、そのゲノム変異の複雑さから治療標的となるdriver geneがほとんどみつかっておらず、難治である。下咽頭がんを含む頭頸部がんは、有望な治療標的の乏しい予後不良のがんである。また、いまだdriver geneの報告が少なく、悪性化機序が未解明なままである。また、解剖学的特性からQOLの維持も困難であり、画期的な治療法が望まれる 申請者らはこれまで、下咽頭がんのがん幹細胞マーカーを見出し、それを標的とすることで、in vivoでの腫瘍抑制効果が得られることを明らかにしてきた。 一方で、このマーカーは正常上皮基底細胞においても発現することから、陽性細胞を直接傷害する抗体治療では、正常の細胞の損傷を避けることは難しい。そこで本申請では、未だ解明されていない1.下咽頭がんを悪性化させる下流経路を明らかとし、2.経路・分子阻害による下咽頭がん抑制効果を検証し、3.正常細胞への影響を確認する。明らかとした経路・関連分子について、4.下咽頭がん患者予後の解析を行う。以上から、よりがん特異的な下咽頭がん治療標的・経路を見出すことを目指している。 本年度は昨年度の内容を引き続きマウス発癌モデルの樹立を進めた。CreERによるノックアウトシステムを用いた系の検証を進めた。また、細胞株実験を繰り返し、データを強固なものにした。
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