研究課題
本研究の目的は、EBV陽性/陰性上咽頭癌細胞株と生検組織のDNAメチル化状態とEBV遺伝子発現レベルの解析を行い、EBV関連胃癌のデータと比較し上咽頭癌のメチル化標的遺伝子を明らかにすることである。そして、細胞株を用いたEBV感染モデルのDNAメチル化パターンの変化と遺伝子発現への影響を評価する。最後に新規化合物のポリアミド 薬剤を用いメチル化標的遺伝子を活性化させ腫瘍形成能を評価する。発癌に影響を与えるのは、どのメチル化標的遺伝子が重要なのか比較し、治療への応用に向け検討を重ねる。昨年度までに上咽頭癌組織およびEBV陽性/陰性上咽頭癌細胞株のDNAメチル化状態とEBV遺伝子発現レベルを解析し、解析結果は既に解析済みのEBV関連胃癌のデータと比較し、上咽頭癌のメチル化標的遺伝子の抽出を行った。上咽頭癌組織が51サンプル、コントロールの正常上咽頭組織52サンプルを解析した。Infinium 850Kビーズアレイ、パイロシークエンサー解析にて、標的遺伝子メチル化を検証し、宿主・EBV 遺伝子発現レベルをRNA-seqで解析した。これらのデータ取得後に、EBV感染の有無とEBV遺伝子発現レベルで層別化し、クラスター解析を行うとともに、EBV陽性胃癌8例のデータと照合し特異的標的遺伝子を抽出した。具体的にはDerlin-3(DERL3)という遺伝子が上咽頭癌のメチル化遺伝子として抽出されている。本年は上咽頭癌細胞株および他のEBV関連腫瘍の細胞株を用いたEBV感染モデルのDNAメチル化パターンの変化と遺伝子発現への影響を評価する。EBV陰性上咽頭癌細胞株HK-1, EBV陰性上咽頭上皮細胞株NP69、NP460、リコンビナントEBVのAkata-EBV を感染させ、経時的に核酸を抽出し評価した。更にEBV感染胃癌モデル細胞と比較をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
本年はEBV感染細胞モデルを樹立でき解析を行なったため、順調に計画は進んでいる。
今後はEBV遺伝子産物の差異によって、どのようにメチル化パターンが変化するのかを検討するとともに、各種免疫因子やメチル化調節因子の影響についても検討を行う。
当初予定して解析ならびに実験が予定していた解析量よりも少なく解析結果が得られたため、予定経費に残額が生じた。次年度の解析ならびに研究にその経費は充当する予定である。
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Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis.
巻: 1869 ページ: 166598
10.1016/j.bbadis.2022.166598