研究課題/領域番号 |
21K09645
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
澤田 研 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50304308)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 匂い分子結合タンパク質 / 嗅覚障害 / 記憶障害 / 薬剤キャリアー |
研究実績の概要 |
本研究計では①匂い分子結合タンパク質の生理機能の解析 ②嗅覚障害マウスを用いて本タンパク質の薬剤輸送キャリヤーの可能性を検討 この2つの基盤研究を平行して行う。 ①の方では2種の匂い分子結合タンパク質Cp-Lip1と2に注目している。昨年度の研究からCp-Lip2が電気生理学的解析から神経細胞の匂い分子の受容を阻害あるいは感度の低下を示していることが明らかになった。また、匂い刺激時間依存的な分布変化の有無を解析した結果、Cp-Lip1とことなり粘液層と上皮内に分布しており時間依存的変化は見られなかった。両タンパク質の取り込み機構に関わる受容体の同定ではスカベンジャー受容体として知られているCD36がCp-Lip1の取り込み関与していることが明らかになった。また、その取り込み機構がエンドサイトーシスによるものであることが示唆された。今後は、この分子機構の解析を進める。しかし、Cp-Lip2の方では受容体の特定並びにその取り込み機構の更なら解析が必要である。 ②慢性ストレス期間依存的に生じる嗅覚障害と記憶障害は先に嗅覚障害が生じ記憶障害が生じる。慢性ストレス3週で発生した嗅覚障害は脱ストレスにより自然治癒できたが6週のストレスにより生じた嗅覚障害は自然治癒しないことが分かった。また、20週間の長期ストレス下では海馬における神経細胞数の有為な減少が見られ、一部のマウスでは鬱症状も確認された。さらなる長期でのストレスによる影響を解析する必要がある。昨年報告した嗅覚障害マウスの治療において本タンパク質が薬剤キャリアーとして有効であることに加え記憶障害も発症したマウスにおいても本タンパク質の薬剤キャリアーの有効性が確認できた。現在はさらなるキャリアーとしての有効性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匂い分子結合タンパク質の生理機能の解析では、コロナによる研究時間の確保などが不十分であったが、上記したようにほぼ予定通りの結果が得られた。しかし、Cp-Lip2の細胞内への取り込みに関わる受容体の同定が少し遅れている。 嗅覚障害マウスを用いて本タンパク質の薬剤輸送キャリヤーの可能性の検討では、ほぼ予定通りに進んでいる。より低投与量の薬剤でも本タンパク質存在下では治癒できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
匂い分子結合タンパク質の生理機能の解析では、Cp-Lip2の生理機能に関わるアミノ酸残基の特定に向けて解析する。また、その取り込み関わるメカニズムも解析していく。Cp-Lip1のほうでは取り込みに関わると思われるCD36との取り込みメカニズムの解析を目指す。 本タンパク質の薬剤輸送キャリヤーの可能性を検討では、本タンパク質の薬剤キャリアーの有効性をより低濃度の薬剤で検討するだけでなくタンパク質の投与量の検討も行う予定である。また、長期ストレス期間である(30週)を付加することにるマウスに与える影響も解析していく。
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