匂い分子結合タンパク質(Cp-Lip1とCp-Lip2)の生理機構の解析では、Cp-Lip1タンパク質が匂い刺激時間依存的に嗅上皮での分布変化が起こることを明らかにした。このとき、刺激5分後で刺激前には粘液層に分布していたタンパク質が細胞内に取り込まれていることが分かった。10分以上では粘液層内には分布していたがそれ以降細胞内への取り込みは見られなかった。同じ条件でカルシュウムイメージング法により嗅神経細胞の応答を確認したところ初めは応答が見られたが、5分以上では匂い刺激の応答は見られなかった。これらのことから匂い慣れにおいてスカベンジャーとして機能していることを見出した。匂い除去においてエンドサイトーシスにより嗅上皮内に取り込まれこのときCD36を介して細胞内に取り込まれていることも明らかにした。更に、これに関与する本タンパク質のアミノ酸残基も同定した。一方、Cp-Lip2では時間依存に関係なく細胞内に取り込まれていることが分かった。また、このタンパク質は嗅神経細胞の匂い受容を阻害する機能を有していることも明らかにした。これらのことからこのタンパク質はスカベンジャー機能を有していると考えた。 このタンパク質を用いた脳への薬剤機構系の確立において本タンパク質が嗅覚輸送により投与後10分で脳室全体に分布し3時間後には消化されていることが分かった。このタンパク質を薬剤キャリヤーとして用いた時、嗅覚障害マウスの治療において本タンパク質を薬剤キャリヤーとして用いてないときの完治に必要な投与量は1/3量で完治したことからこのタンパク質は薬剤キャリヤーとして有効であることが分かった。
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