研究課題/領域番号 |
21K09657
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
川野 利明 大分大学, 医学部, 助教 (30633424)
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研究分担者 |
平野 隆 大分大学, 医学部, 講師 (20305056)
鈴木 正志 大分大学, 医学部, 教授 (60211314)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / 鼻腔投与型ワクチン / マトリックスプロテイン / アジュバント |
研究実績の概要 |
インフルエンザワクチンは接種株と感染流行株が一致した場合には有効であるが、異なった場合には有効性が低下する。マトリックスプロテインを用いて異なる感染株に対しても有効なユニバーサルワクチンの開発を目指す。これまでインフルエンザウイルスワクチンとして用いられてきた外膜成分のヘマグルチニンだけでなく、普遍領域であるM2マトリックスプロテインを追加した新たなワクチン戦略を構築する。現在使用されているHA特異抗体を用いたワクチンでは抗原特異性が高いのだが、中和されてしまうという特徴がある。より普遍的なユニバーサルワクチンにはより保存されたタンパク領域を標的とする必要がある。他にも、M1タンパクやHA幹領域といったワクチンとしての候補もあるが、今回は普遍領域であるM2タンパクを使用した。アジュバントを付加した鼻腔投与型のインフルエンザワクチンを4群のマウスに分け投与する。ワクチン接種を2週間の間隔をあけて2回投与する。ワクチン投与14日後に致死濃度のPR8ウイルスを鼻腔投与し、一日ごとに体重測定を行いマウスの変化や全身状態を観察する。その2週間後にマウスを安楽死させ免疫学的評価を行う。2回のワクチンの投与後、感染後の血清、鼻腔洗浄液のIgG、IgG1、IgG2A、IgA抗体をELISA法で測定する。HAIテストによりインフルエンザウイルス特異性抗体の感染前、感染後の変化を観察しワクチンの有用判定を行った。またフローサイトメトリーを行い各臓器内での免疫細胞の動態を測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
致死的インフルエンザウイルスを感染させた後のマウスの体重測定を行なったところ感染から5日後まではどの群でも減少が見られたが7日後からヘマグルチニン+M2タンパクを加えた群で特に体重増加が見られ、最もワクチンが有効であった。Ca07とM2タンパクによる複合ワクチン群ではウイルス感染後にHAI titerが増加していたが、そのほかの群では低下していた。ウイルス感染後にもCa07とM2タンパクによる複合ワクチン群では、血清中の抗体産生能が低下しないことが示された。ヘマグルチニン特異性抗体の検討では血清中の抗体産生に関してはIgAはワクチンの2回目投与後とウイルス投与後に同程度の発現を認め、Ca/07にM2タンパクを投与した群で特に血清内のIgAが上昇していた。IgGに関してはウイルス投与後に各群強い誘導を認めたが、特にCaとM2タンパクを複合させたワクチンにおいては他群よりも強い誘導が見られた。その原因として血清内のヘマグルチニン特異性IgGの上昇が他のグループよりも強くこのことがウイルス抵抗性に関与したものと考えられる。フローサイトメトリーによる各臓器内での免疫誘導の検討ではリンパ節内のCD4+CD62+ naive T 細胞がCa07とM2タンパクによる複合ワクチン群で有意に増強されていた。B220+CD49b+ NK細胞はM2タンパク付加群のみで上昇を認めた。M2タンパクを加えたワクチン接種株は感染株と異なる場合でも致死的ウイルス量に抵抗性のあるクロスプロテクション効果を認めた。特にCa/07にM2タンパクを加えた複合ワクチン群ではIgGが強く誘導されていた。M2タンパクは脾臓内でNK細胞の分化促進に関連していた。Ca/07にM2タンパクを加えた複合ワクチン群では脾臓内のCD4+のnaive T細胞が有意に誘導され感染防御に寄与していた。
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今後の研究の推進方策 |
M2タンパクを加えることでこれまでのワクチンよりも強いクロスプロテクション作用を持つ、より有効性が高いワクチンが作成できることが示された。一般にワクチンは有効性と副反応という相違した作用を持つため、今後このワクチンを上世するためには副反応の評価が必要になる。ワクチン後の鼻腔粘膜や、各臓器における副反応がどれほど起こるのかを今後検討する必要がある。まずは血清や脾臓などにおけるサイトカインの発生や、鼻腔粘膜局所における粘膜肥厚などの評価する予定である。本検討の結果はアメリカウイルス学会をはじめ、国内の学会でも発表予定であり、さらにブラッシュアップしたワクチン作成を行えればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染流行や当研究施設での動物実験室の改修工事により予定している実験の進捗が予定と少しずれが生じた。本年度には予定の研究計画を進める。
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