研究課題/領域番号 |
21K09664
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小川 徹也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40334940)
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研究分担者 |
吉川 和宏 愛知医科大学, 加齢医科学研究所, 特務教授 (60109759)
鈴木 進 愛知医科大学, 加齢医科学研究所, 准教授 (70518422)
都築 豊徳 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70627645)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外科腫瘍免疫学 / 頭頸部外科学 |
研究実績の概要 |
本研究で我々は、頭頸部癌にける頸部リンパ節の好腫瘍免疫能を確認することを目標として研究を進めた。現在、頸部リンパ節転移に対する頸部郭清は、頭頸部癌(HNC)に対する確立された術式である。頸部郭清術では、100年以上も前の概念を元に、転移のある頸部リンパ節組織を、正常つまり転移が認められないものも含め、予防的に一回切除をして、根治性を高めるという概念で現在も実施されている。しかし、免疫療法の出現により、頭頸部外科腫瘍医は、免疫機能を有するリンパ節を含め、すべてのリンパ節を切除することを再考する必要があると考える。すなわち、転移が認められないリンパ節は、免疫治療には必要であり、このリンパ節を摘出してしまうことは、がん免疫治療が標準治療となっている現在では、意味をなさなくなってしまう可能性もある、という考えに基づいている。よって今回われわれは、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)陽性の頭頸部扁平上皮癌患者4人を対象に、頸部リンパ節の抗癌免疫反応を調べた。これらの患者の局所リンパ節、転移性リンパ節、非転移性リンパ節および末梢血から抽出したリンパ球を用いて、抗IFNγおよび抗TNF-αモノクローナル抗体を用いた細胞内フローサイトカインアッセイを行い、HPV16 E6-およびE7-特異的T細胞を検出した。HPVの状態とp16の免疫染色は、HPV RNAscope法を用いたin situ検出と免疫組織化学によって決定した。ある症例では、E6特異的およびE7特異的CD8+ T細胞が近位の転移性リンパ節および遠位の非転移性リンパ節で検出された。この所見は、頸部郭清の際に非転移リンパ節の免疫機能を温存すべきこと、また免疫療法を行う際には非転移リンパ節の免疫機能が重要であることを示唆している。この観点から、HNCを治療する頭頸部外科腫瘍医は、HNC治療における免疫療法と頸部郭清の位置づけを考慮すべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭頸部癌における、免疫学的頸部郭清の考えを元に、研究は概ね順調に進展していると考えている。世界で初めて、頸部郭清リンパ節組織の中で、転移を認めていないリンパ節において好腫瘍免疫能を確認したことは、極めて意義深いものと考えている。更に今後、頭頸部腫瘍そのものから、抗腫瘍免疫を惹起する、新しい治療法の開発は必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
抗腫瘍免疫能を活かす治療法確立を目指し、選択的に免疫チェックポイント阻害剤などの薬剤を投与する手法を考えている。すなわち、今後さらに、頭頸部癌、および関連する頸部リンパ節においてのみ、特異的に抗腫瘍免疫を惹起させる、新たなる探索研究を元に、研究開発を進めていく予定である。動注免疫治療法を考え、進めている。本科研費成果を元に、局所動注免疫治療法を進めている。更にこの考えを発展し、頭頸部癌における局所腫瘍免疫治療法の開発を進めていくべきと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎研究を進めていくとともに、臨床研究も考え、進めていく予定である。具体的には現在進めている特定臨床研究を進めていくことと、更に本科研費を下に考案している、新しい治療法の開発を進めていくこととしている。
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