研究実績の概要 |
マウス高眼圧モデルとして、マイクロビーズと粘弾性物質の前房内注入によって4週にわたり眼圧上昇できることを確認した。このマウスで、網膜進展標本を作製し、TUJ1免疫染色くを行ったところ、網膜神経節細胞が経時的に有意に脱落することをで確認した。Weestern blotting, 免疫沈降、ならびに免疫染色により、高眼圧モデルマウスでは、網膜内アクアポリン9(AQP9)、monocarboxylate transporter (MCT)1,2,4の発現が有意に低下していた。 視神経挫滅モデル1週で、24時間案順応後に暗所視閾値電位(STR)を測定したところ、STRが有意に低下した一方で、強い刺激によるa波、b波には変化はなく、このSTRの変化は視細胞や双極細胞の変化に続発するものではなく、網膜神経節細胞の機能低下であることが示された。また網膜伸展標本とTUJ1免疫染色で、高眼圧モデル同様網膜神経節細胞死が有意に増加した。また同じく、AQP9, MCT1,2,4の発現低下がみられた。 視神経挫滅マウスに高濃度乳酸を吸入麻酔下で3時間腹腔内投与することにより、網膜神経節細胞死、STR低下、AQP9, MCT1,2,4の発現低下は有意に改善した。 網膜の解糖系、電子伝達系の基質を質量分析装置でメタボローム解析を行ったところ、網膜内ではglucoseよりもL-lactateの濃度の方が有意に高かった。 網膜では定常状態下でも乳酸がグルコースよりも豊富に存在し、高眼圧や視神経挫滅で乳酸輸送体の発現が低下し、網膜神経節細胞の機能不全と細胞死が生じるが、外因性の乳酸投与が神経保護効果を発揮する可能性が示された。
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