研究課題
ぶどう膜炎や加齢黄斑変性などの眼炎症疾患におけるProstaglandin D2(PGD2)の関与を解明することを目的とする。昨年度はPGD2受容体の 1つであるDP2受容体のノックアウトマウス(DP2KO)および2種類のDP2アンタゴニスト(CAY10471とOC000459)を用いて、加齢黄斑変性の動物モデルであるマウ スレーザー誘発脈絡膜新生血管(マウスCNV)モデルにおけるPGD2の役割を検討した。 マウスCNVモデルは、C57BL6マウスの眼底にダイオードレーザーを4~8発照射して 1週間後に眼球摘出し、網膜にできたCNVの大きさを測定した。 8週齢、52週齢マウスどちらにおいても、DP2KOマウスは野生株(WT)マウスに比べCNVサイズが小さく、高齢マウスの方がCNVサイズの減少が大きかった。2種類のDP2アンタゴニスト投与でも投与量に依存してCNVサイズが縮小した。またレーザースポット部位に遊走するマクロファージの数を免疫染色(F4/80抗体)で検討したところ、 DP2KOマウスでは有意に減少していた。今年度はレーザー照射3日後の眼内のVEGF、MCP-1濃度を測定し、DP2KOマウスではWTマウスと比べのVEGFは低値であったが、MCP-1は有意差がなかった。一方、ヒト培養網膜色素上皮細胞(ARPE-19)をPGD2で刺激しサイトカイン産生を調べたところ、CAY10471によりVEGF産生が低下したが、MCP1産生は変化がなかった。以上の結果から、マウスCNVモデルにおいてDP2阻害はマクロファージの集簇を抑制してCNVサイズを縮小させること、DP2阻害が加齢黄斑変性の新たな治療標的となりうることを明らかにした。この成果を原著論文(Soga H, et al. Transl. Vis. Sci. Technol. 2023)で報告した。
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