研究課題
本研究課題では1) 特発性ぶどう膜炎の臨床像(視力予後、眼合併症の発生頻度、治療法など)の検討、2)マイクロアレイの手法を用いて特発性ぶどう膜炎患者と健常人の血清中microRNAを比較、特に肉芽腫性と非肉芽腫に分類した場合の血清中microRNAの発現パターンの比較、さらに我が国の代表的な肉芽腫性ぶどう膜炎であるサルコイドーシス患者の血清中のmicroRNAと特発性肉芽腫性ぶどう膜炎患者血清中のmicroRNAの発現プロファイルの類似点、相違点を比較検討することを目的とした。令和3 年度は1)を中心に検討した。2011年から2018年までの期間に当院を初診し、特発性ぶどう膜炎と診断された521例について検討したところ、全体の初診時平均年齢は53.6歳(7歳~93歳)、炎症部位の分類では前部ぶどう膜炎が225例(43.1%)で最も多く、次いで汎ぶどう膜炎193例(37.0%)、後部88例(16.9%)、中間部15例(2.9%)の順であった。1年以上経過観察可能であった247例403眼について、視力経過を検討したところ、1年後の視力が1.0以上だったのは全体で240眼(61.5%)であり特発性ぶどう膜炎の短期的視力予後は比較的良好と考えられた。また視力予後不良因子について多変量解析を用いて検討したところ、初診時視力不良例、および初診時の網膜外層障害が予後不良因子して抽出された。2)については特発性ぶどう膜炎、および我が国において最も頻度の高いぶどう膜炎であるサルコイドーシス症例の血清を採取しmicroarrayの手法を用いてmicroRNAの発現パターンについて解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
令和3年度では1) 特発性ぶどう膜炎の臨床像(視力予後、眼合併症の発生頻度、治療法など)の検討を中心に行った。2011年から2018年までの期間に当院を初診し、特発性ぶどう膜炎と診断された521例について検討したところ、全体の初診時平均年齢は53.6歳(7歳~93歳)、炎症部位の分類では前部ぶどう膜炎が225例(43.1%)で最も多く、次いで汎ぶどう膜炎193例(37.0%)、後部88例(16.9%)、中間部15例(2.9%)の順であった。1年以上経過観察可能であった247例403眼について、視力経過を検討したところ、1年後の視力が1.0以上だったのは全体で240眼(61.5%)であり特発性ぶどう膜炎の短期的視力予後は比較的良好と考えられた。また視力予後不良因子について多変量解析を用いて検討したところ、初診時視力不良例、および初診時の網膜外層障害が予後不良因子して抽出された。これらの検討より特発性ぶどう膜炎の臨床像、視力予後、予後不良因子を明らかにすることができた。以上より令和3年度の目標はほぼ達成されたと考える。
令和4年度は2)マイクロアレイの手法を用いて特発性ぶどう膜炎患者と健常人の血清中microRNAを比較、特に肉芽腫性と非肉芽腫性に分類した場合の血清中microRNAの発現パターンの比較、さらに我が国の代表的な肉芽腫性ぶどう膜炎であるサルコイドーシス患者の血清中のmicroRNAと特発性肉芽腫性ぶどう膜炎患者血清中のmicroRNAの発現パターンの類似点、相違点を比較検討を予定している。ぶどう膜炎患者(肉芽腫性と非肉芽腫性)、健常人から血清を採取しmiRNAを含めたtotal RNAを抽出、 miRNA 4.0 assayを使用し、microRNAの発現パターンを網羅的に解析、その結果をもとに機械学習の手法の一つであるクラスター解析、主成分解析を行い発現パターンの違いについて検討する。また、健常人と比較してぶどう膜炎患者(肉芽腫性と非肉芽腫性)において発現が有意に高い、または低いmiRNAを抽出する。これらの結果をもとにKEGGなどの公共データベースを用いて標的となりうるpathway解析を行い、肉芽腫性と非肉芽腫性ぶどう膜炎に共通、または各群に特異的に発現するmiRNA、pathwayを抽出し各群の病態との関連について考察する予定である。またサルコイドーシス患者の血清中のmicroRNAと特発性肉芽腫性ぶどう膜炎患者血清中のmicroRNAの発現パターンの違いについても同様の手法を用いて検討する。
令和3年度では1) 特発性ぶどう膜炎の臨床像(視力予後、眼合併症の発生頻度、治療法など)の検討、2)マイクロアレイの手法を用いて特発性ぶどう膜炎患者と健常人の血清中microRNAを比較、特に肉芽腫性と非肉芽腫に分類した場合の血清中microRNAの発現パターンの比較を計画した。1)について診療録を基に後方視的検討を行った。2)については血清の採取はほぼ予定通り、進んでおりRNAの抽出、一部の症例のmiRNAの発現解析を行うことができたが、新型コロナウイルス感染予防の観点から研究室の使用について時間的、人数的な制限を行ったため当初計画していた検体数の解析を実施できなかった。そのため2)の解析は次年度に繰り越しとなった。令和4年度ではgene miRNA 4.0 assayを用いて特発性ぶどう膜炎患者と健常人の血清中microRNAを比較、特に肉芽腫性と非肉芽腫に分類した場合の血清中microRNAの発現パターンの比較、また肉芽腫性ぶどう膜炎の代表的疾患であるサルコイドーシス患者の血清中のmicroRNAと特発性肉芽腫性ぶどう膜炎患者血清中のmicroRNAの発現プロファイルの類似点、相違点を比較検討する計画である。またマイクロアレイの結果について定量PCRでvalidation studyを行う予定である。
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