糖尿病黄斑浮腫(DME)は、慢性持続性高血糖状態が引き起こす網膜末梢血管の器質的・機能的障害により、血中の漿液成分が網膜組織へ漏出し網膜浮腫が誘導され、これが視機能の中心領域である網膜黄斑部に及んで視力低下を引き起こす病態であり治療に難渋してきたが、近年、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の登場により、著明な視力改善効果が報告されている。我々は抗VEGF薬の承認前のDMEに対する2年間の治療予後を多施設共同研究結果として以前報告しているが、視力改善はほとんどみられなかった。 本研究では抗VEGF療法の承認後を対象に、我が国での網膜硝子体専門施設において未治療のDMEに対する2年間の介入治療後の実臨床における視力予後を評価することを目的に本研究を行った。 2015年から2019年の間に初めて介入治療を開始し、2年間追跡できた治療歴のないDME眼1780例を、日本の37か所の網膜硝子体専門施設の診療記録から抽出した。介入治療には、抗VEGF療法、副腎皮質ステロイド局所療法、黄斑光凝固術、硝子体手術を含み、治療前と最終(2年目)の最高矯正視力(BCVA)、各介入治療の回数と時期を記録、そして、各症例は介入開始年により分類した。 2年間でBCVAは年々改善し最終的には7文字の改善に達した。良好な視力(BCVA>20/40)を維持している眼の割合は、最終的には73.3%に増加した。抗VEGF療法は治療パターンとして安定しており、約90%の眼に投与されていることが判明した。注目すべきは、第一選択として抗VEGF薬を投与された眼の割合が約80%と劇的に増加したことである。 DMEに対する抗VEGF薬の承認後、抗VEGF療法は実際の第一選択治療となっている。これらの所見は、DME治療の進化を反映しており、抗VEGF療法の優位性と、時間の経過とともにその普及が進んでいると考えられる。
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