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2022 年度 実施状況報告書

軸索再生と再髄鞘化をターゲットとした遺伝子治療による視機能回復の検討

研究課題

研究課題/領域番号 21K09688
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

郭 暁麗  公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主席研究員 (50443114)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード遺伝子治療 / 脊髄炎 / 正常眼圧緑内障モデルマウス / 樹状突起
研究実績の概要

PHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターによるEAEマウスにおける脊髄炎の軽症化はすでに前年度で明らかにした。今年度はTrkBシグナル経路の下流にあるiSH2とERK遺伝子のPHP.eBベクターをそれぞれ作製し(PHP.eB-MAG2.2-iSH2、PHP.eB-MAG2.2-ERK)、脊髄炎への治療効果を検討した。これらのベクターはコントールのベクター(PHP.eB-MAG2.2-GFP)と比べ脊髄炎の重症度は変わらなかった。この結果から、シグナル経路の上流にあるTrkBの重要性が示唆された。また、網膜の展開標本を作製してRBPMS染色を行いその解析からPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターによるEAEマウスにおける網膜神経節細胞(以下RGC)への保護効果を見出した。
一方、インスリン受容体の活性型分子(以下改変型IR)を設計し、その遺伝子治療によりRGC樹状突起の再生が可能か、正常眼圧緑内障モデル動物を用いて検討した。WBによりインスリンシグナルであるAKTおよびERKのリン酸化を定量したところ、対照群と比べ改変型IRは有意に増加していた。次に、正常眼圧緑内障モデルマウスであるGLAST KOマウスとThy 1-EGFPマウスを交配させたマウスを使用し、正常眼圧緑内障モデルマウスのRGC樹状突起について解析を行った。EGFPで標識されたRGCを共焦点顕微鏡で撮像し、樹状突起をImarisのフィラメントトレース機能を用いて解析しその長さの総和を計算した。GLASTヘテロマウスのRGC樹状突起は野生型と比べ、大きさが小さく、樹状突起の長さは有意に短くなっていた。改変型IRの遺伝子治療により、緑内障モデルマウスにおけるRGC樹状突起の再生が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

消耗品などの供給が回復したためウイルスベクターの作製が軌道に乗ってきた。また新たに雇用したテクニシャンのサポートもありPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターのほかPHP.eB-MAG2.2-iSH2、PHP.eB-MAG2.2-ERKべクターによる脊髄炎への効果も調べられた。さらにインスリン受容体の活性型分子による樹状突起の再生も認められ、ほぼ計画通りに研究を進めている。

今後の研究の推進方策

PHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターの事前投与によるEAEマウス重症度の軽減メカニズムを明らかにしていく。具体的にはTrkBシグナル経路にあるpERKやpAKTなどの発現変動をWestern blotや組織免疫化学法などの手法で調べるほか、cytokine/chemokineなどの炎症性物質やLingo-1、TGF-betaなど再髄鞘化の抑制因子への影響も解明していく。さらに発症後のEAEマウスにPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターを投与し、脊髄炎への治療効果の有無をclinical scoreや病理学的解析から明らかにする。また網膜神経節細胞死や視機能を調べることにより視神経炎への治療効果も検討する。
一方、インスリン受容体の活性型分子(改変型IR)の遺伝子治療においてはシナプス再生への影響を明らかにする。活性型インスリン受容体の遺伝子治療により、実際にシナプスが再生するのか、また、シナプスが再生したのであれば視機能は回復するのかを検討する。視神経挫滅モデルを用いて軸索再生が促進できるかを調べる。さらに、変性過程に入る時期に改変型IRやAAV2-iTrkBベクター等を投与し、樹状突起の保護や再生の促進が可能かを検討する。

次年度使用額が生じた理由

消耗品の節約により5%の次年度使用が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて各種プラスミドの作製、細胞培養、細胞免疫染色や生化学的解析に必要な試薬や消耗品等に使用予定である。

備考

理事長表彰を受賞した。
東京大学医科学研究所元所長の「新井先生を偲んで」の日本語翻訳を担当した(Maoyen Chi. 実験医学 40(11): 1763-1769, 2022)。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Vision protection and robust axon regeneration in glaucoma models by membrane-associated Trk receptors2023

    • 著者名/発表者名
      Nishijima Euido、Honda Sari、Kitamura Yuta、Namekata Kazuhiko、Kimura Atsuko、Guo Xiaoli、Azuchi Yuriko、Harada Chikako、Murakami Akira、Matsuda Akira、Nakano Tadashi、Parada Luis F.、Harada Takayuki
    • 雑誌名

      Molecular Therapy

      巻: 31 ページ: 810~824

    • DOI

      10.1016/j.ymthe.2022.11.018

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ASK1 signaling regulates phase-specific glial interactions during neuroinflammation2022

    • 著者名/発表者名
      Guo Xiaoli、Kimura Atsuko、Namekata Kazuhiko、Harada Chikako、Arai Nobutaka、Takeda Kohsuke、Ichijo Hidenori、Harada Takayuki
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 119 ページ: e2103812119

    • DOI

      10.1073/pnas.2103812119

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of lighting environment on the degeneration of retinal ganglion cells in glutamate/aspartate transporter deficient mice, a mouse model of normal tension glaucoma2022

    • 著者名/発表者名
      Ohashi Tsutomu、Namekata Kazuhiko、Guo Xiaoli、Kimura Atsuko、Harada Chikako、Harada Takayuki
    • 雑誌名

      Biochemistry and Biophysics Reports

      巻: 29 ページ: 101197~101197

    • DOI

      10.1016/j.bbrep.2021.101197

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Oxidative stress-responsive gene ASK1 in retinal and optic nerve degeneration.2022

    • 著者名/発表者名
      Xiaoli Guo
    • 学会等名
      ARVO2022 meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Constitutively active Ras promotes protection and axon regeneration in retinal ganglion cells after optic nerve injury2022

    • 著者名/発表者名
      Kiyota N., Namekata K., Guo X., Kimura A., Nakazawa T. and Harada T.
    • 学会等名
      ARVO2022 meeting
    • 国際学会
  • [備考] ASK1シグナルは神経炎症におけるグリア間相互作用を病期特異的に制御する

    • URL

      https://www.igakuken.or.jp/topics/2022/0201.html

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公開日: 2023-12-25  

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