研究実績の概要 |
我々はこれまでにマウスの視神経挫滅モデルを用いた網膜神経節細胞の変性過程における細胞死のメカニズムに着目した研究をおこなっている。視神経挫滅2日後のマウス眼において、網膜神経節細胞のアポトーシスが開始されることから、本研究においても視神経挫滅2日後にマウス眼をサンプリングし、網膜神経節細胞の細胞サイズ別分取を試みた。網膜の単細胞化には市販のパパイン含有キットを使用し、既報に準じてCD90.1(Thy1.2, 53-2.1),CD11b(M1/70), CD11c(HL3), CD31(MEC13.3), CD34(RAM34), CD45(30-F11)で染色し、BD FACSAriaII(BD Bioscience)でThy1.2+(CD11b,11c,31,34,45-)画文を網膜神経節細胞(RGCs)として分取した。この際、死細胞は7AADで染色し除去した。また、small RGCs(S-RGCs)およびlarge RGCs(L-RGCs)はFSCとSSCのプロット図により分かれたポピュレーションにより分取した。 分取したサンプルをRNA抽出し、RNAシークエンスにより網羅的遺伝子発現変動のデータを取得したのち、Qiagen社のパスウェイ解析ソフトであるIPAにて解析をおこなった。その結果、比較的サイズの大きい網膜神経節細胞では、視神経挫滅2日後においてサイトカインシグナルの亢進、グルコース代謝や脂質代謝の異常が示唆される結果が得られた。一方で、比較的サイズの小さい網膜神経節細胞では上述のようなシグナル経路の変動を認めなかった。これらの結果から、視神経挫滅モデルにおける網膜神経節細胞死のメカニズムは、網膜神経節細胞の大きさにより異なる点がある可能性が示唆された。
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