研究課題
緑内障は高眼圧が最大の危険因子考えられているが、発症に関与する因子は多数ある。眼圧以外の危険因子として剛性パラメータ、循環因子、酸化ストレスなどが挙げられている。これまでの我々の研究から眼圧が比較的低い正常眼圧緑内障においては非眼圧依存性の危険因子、特に眼球剛性のパラータの重要性が確認されている。本研究の目的は非眼圧性の危険因子のパラメータが持つ緑内障の発症や進行に対する寄与度を明らかにすることにある。具体的には各眼圧非依存性にかかわるパラメータを説明変数、緑内障の有無を目的変数としたときの各パラメータの関係性を明らかにする。緑内障の発症や進行に眼球剛性パラメータ、酸化ストレスや眼血流パラメータがどの程度影響するのかを研究の問いとする計画である。2021年度には健常者100名を対象に眼剛性パラメータと循環パラメータのデータを取得した。研究結果として以下のものが得られた。角膜の変形を抑えるような眼球剛性パラメータ(A1 Velocityが遅い、HC Timeが長い、CCTが厚い、Peak Distanceが長い、A2 lengthが長い)を持つ眼では視神経乳頭部、黄斑部の血流が遅くなることを報告した。また逆に眼血流が良くなればA2 lengthが短くなるという結果になった。これらのパラメータは加齢の影響を受ける。引き続いて開放隅角緑内障71眼、閉塞隅角緑内障患者51眼の眼剛性パラメータと循環パラメータを取得した。閉塞隅角緑内障は開放隅角緑内障と比べて緑内障進行が遅い可能性が示唆された。論文投稿中である。無治療の開放隅角緑内障はと健常眼を比較すると眼圧よりも眼球剛性パラメータが両者の違いで顕著であった。抗緑内障薬は眼球剛性に影響があった。(Aoki et al, Sci Rep. 2023 Jan 3;13(1):96. )で報告した。
3: やや遅れている
2021年度は健常者100名を対象として、循環改善作用を持つと考えられるサプリメントの効果を検証する研究を行った。そのため効率よくデータを集めることができた。2021年度はそのデータをもとに学会発表を行った。並行して開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の患者のデータも取得することができた。2022年度はクアラルンプールのでのAsia Pacific Academy of Ophthalmology 2023にて眼血流と眼球剛性に関係があることを報告した。第126回日本眼科学会総会では健常者におけるLSFGとCorvis STパラメータの関連性について報告した。2023年度はAI学会で白内障、緑内障同時手術で視力予測に関する研究結果を報告する。ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、Light GBMをモデルとして選択した。第34回緑内障学会ではCorvis ST(眼球剛性)を用いた緑内障診断AIというタイトルで発表予定である。得られたデータの解析方法にAIを用いることができるようになった。研究の幅が広がったが、全体の進捗が遅くなった。
昨年に引き続き酸化ストレスマーカーの検討ができなかった。全体として論文化が遅れていること、AIを用いた解析を新たに始めたこと本科研の課題以外にも日本緑内障学会の共同研究やシンガポール大学との国際共同研究が新たに立ち上がった.こちらにエフォートを取られていることが酸化ストレスマーカーの研究を妨げる要因となっている。眼球剛性パラメータを取得できるCorvis STに付属するコンピュータが故障し、修理不能状態である。酸化ストレスマーカーの検討は次年度以降に持ち越したい。
コロナ感染症のために国際学会の多くはon lineになった。学会出張旅費の支出が減った。今年度は2度の国内学会、1度の国際学会の出席を予定している。論文の受理が遅れているために投稿料も未使用のままである。最近の投稿料は高額であるために、投稿中の論文が受理されれば計画通りの支出になる。
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