研究課題/領域番号 |
21K09712
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
角田 和繁 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 部長 (30255525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 黄斑ジストロフィ / 中心窩回避 / 自然経過 |
研究実績の概要 |
本研究では、黄斑ジストロフィ患者の自然経過(視力、視野等の自覚的評価、および光干渉断層計(OCT)、眼底自発蛍光等のMultimodal imagingによる他覚的評価)を多数例で前向きに評価することで、黄斑ジストロフィに特徴的な中心窩回避の自然経過および病態を明らかにし、今後の治療導入に役立てるのが目的である。本年度は東京医療センターにおける黄斑ジストロフィ(スターガルト病、錐体杆体ジストロフィ、その他のジストロフィ)の症例データを集積し、125例250例について、視力、視野、眼底所見、OCT所見、眼底自発蛍光所見、網膜電図等のデータベースを作成した。さらに、集積されたデータを解析し、OCTにおける中心窩残存EZ領域、および自発蛍光における蛍光消失領域(DDAF)を元に、以下の様に中心窩回避の新たな分類、定義を作成した。 Step 1: 検眼鏡的所見、黄斑部(中心2000μm以内)における異常。Step 2: FAF所見① 黄斑部(中心2000μmより内側)における、直径250μm以上の蛍光消失領域(DDAF)。Step 3: FAF所見② A.中心窩(500μmより内側)および B.傍中心窩における、直径250 μm以上のDDAF。Step 4: OCT所見A.中心窩(直径300μm以内)とB.傍中心窩(直径300~1500μm)における EZの有無。 上記の分類法により、全ての症例における網膜色素上皮層の変性パターンを、1)中心窩先行、2)傍中心窩先行(中心窩回避)、3)判定不能、の3群に分類することができた。 今回新たに設定した定義によると、黄斑ジストロフィにおいて網膜色素上皮変性の進行パターンが確認できた症例のうち、97%以上が傍中心窩先行であることが確認できた。 また、同様の解析を多施設において行うため、国内6施設において画像データ解析を依頼している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
黄斑ジストロフィの対象症例が予想以上に多くデータバンクに集積され、主任施設のみで125例以上の症例データの集積見込みが得られた。 本年度においては、まず後ろ向きコホート解析、前向き経過観察解析の準備のため、画像データを元に中心窩回避を客観的に評価する基準を作成した。この新基準を元に、東京医療センターの症例においてPreliminaryな評価を行ったところ、これまでの海外の報告とは異なる新たな知見が得られた。 今後、さらにデータ収集、解析を進めることで、疾患の病態解明、および予後の予想に有益な、新たな知見が得られる可能性が高いことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作製した中心窩回避の診断基準を元に、引き続き当院および多施設からのデータ収集を進め、後ろ向き研究の多数例データをまとめ、学会等で報告する。 また、自然経過研究については、現在倫理審査申請準備中であり、許可が得られ次第、患者の前向きデータの取得を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年度には多施設のデータ収集、およびデータ解析作業が開始されるため、初年度よりも多くの経費が必要と見込まれた。
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