研究課題/領域番号 |
21K09712
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
角田 和繁 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 視覚研究部, 部長 (30255525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 黄斑ジストロフィ / 中心窩回避 / 視細胞萎縮 |
研究実績の概要 |
黄斑ジストロフィの症例のなかには、その進行過程において、中心窩の視細胞および網膜色素上皮の構造・機能が、傍中心窩に比べて長期的に温存される中心窩回避(foveal sparing)が見られることが知られている。中心窩回避は晩期発症例でしばしば観察され、その出現率は10%から30%とかなり低めに報告されている。 本研究の目的は、黄斑ジストロフィの多数例において、中心窩と傍中心窩のどちらが先行して変性するかを調べることで中心窩回避の実態を調査し、中心窩変性のメカニズムを解明することである。 臨床的に黄斑ジストロフィと診断された症例を対象とした。当院および、共同研究施設8施設から該当症例を抽出し、後ろ向きに検討した。三宅病、ベスト病、X連鎖性網膜分離症は対象外とした。評価に当たっては、画像評価基準を独自に作製した。まず眼底自発蛍光を用いて、中心窩(直径500マイクロメートル以内)および傍中心窩(直径500-2000マイクロメートル)における直径250マイクロメートル以上の蛍光消失領域(DDAF)の有無を評価した。続いて光干渉断層計を用いて、中心窩と傍中心窩におけるEZ欠損の有無を評価した。いずれかの領域のみに異常が見られた場合に中心窩先行もしくは傍中心窩先行と判定し、それ以外は判定不能とした。 当院においては146例(男性77名、女性69名。年齢6-91歳、平均42.4±18.8歳)が対象となった。そのうち、中心窩先行と判定されたものが1例、傍中心窩先行が73例、判定不能が72例であった。現時点で黄斑ジストロフィで先行障害部位が確認出来た症例では、ほぼ全例において傍中心窩から視細胞変性が進行していた。 今後、引き続き多施設の症例を加えて検討し、さらに経時的変化にともなうDDAFならびにOCTの視細胞萎縮領域の変化率等を比較検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主任施設の症例は現時点で200症例を越え、また原因遺伝子も8種類以上の多岐に渡るコホートが作製された。さらに本年度後半には、共同研究施設8施設から多数の症例登録が行われ、中心窩回避の実態解明に十分な症例が確保されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当院のみならず、多施設の症例を合せて定量的な比較を行う予定である。評価に当たっては、過去の報告よりも厳密な画像評価基準を独自に作製している。すなわち、まず眼底自発蛍光を用いて、中心窩(直径500マイクロメートル以内)および傍中心窩(直径500-2000マイクロメートル)における直径250マイクロメートル以上の蛍光消失領域(DDAF)の有無を評価し、続いて光干渉断層計を用いて、中心窩と傍中心窩におけるEZ欠損の有無を評価するものである。さらに、中心窩温存の条件として中心視力0.2以上という基準も設けた。これらの画像選択基準は従来の研究に比べてかなり厳密なものであり、多施設を含めた長期的な比較をする上で脱落症例が多く出現する可能性が考えられた。今後は、長期経過を観察するための新たな画像判定基準を考案し、多数例の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遠距離の出張を取りやめたことによりオンラインで参加したため、予定した金額よりも経費が少なくなったため
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