研究課題/領域番号 |
21K09713
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任准教授 (80714576)
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研究分担者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
尾崎 拓 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70621069)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 眼生理学 / 遺伝子治療 / 網膜色素変性症 |
研究実績の概要 |
網膜の光受容タンパク質であるロドプシンが機能するためにはレチナールの供給が必須であり、網膜色素変性症患者に対してビタミンAを投与することにより一部の患者では夜盲の改善が改善されることが知られている。しかしながら、大規模臨床試験ではビタミンAの効果は認められず、限定した患者に対する効果と考えられている。我々は、これまでに微生物由来のチャネルロドプシン遺伝子を用いた遺伝子治療により視覚を回復できることを報告している。チャネルロドプシンは、哺乳類ロドプシンと同様にビタミンA誘導体が機能発現に重要であるが、ヒトロドプシンが必要とするレチナールの代謝経路は視細胞および網膜色素上皮細胞が主たる経路であるため、視細胞変性後の網膜においてチャネルロドプシンに対してどのような経路でレチナールが供給されているかは不明である。現在までの研究で、HPLCを用いた網膜中のレチナール測定系を確立しており、本年度、正常ラット、網膜変性ラットおよびチャネルロドプシンを恒常的に発現するトランスジェニックラット(ChR2-TG)の網膜中レチナールの濃度を測定した。視細胞変性を来した遺伝性視細胞変性ラットのレチナール濃度は正常の約半量であった。また、ChR2-TGラットでは正常ラットに比較して高い傾向にあったが、視細胞変性後は同様に正常の約半量となった。また、RNA-seqを用いた発現遺伝子の網羅的解析では、視細胞に存在するレチナール代謝酵素は視細胞変性ラットにおいて減少し、一方、ミュラー細胞に存在するレチナール代謝酵素の増加が確認され、ミュラー細胞がChR2の機能発現に重要な役割を担うレチナールを供給している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで行ってきた研究では、網膜のビタミンA量は正常動物と比べ、遺伝性網膜変性動物および高照度光誘発性視細胞変性動物では半量以下であることが分かった。遺伝子導入または遺伝子改変動物においてオプトジェネティクスタンパク質が発現していると、網膜のビタミンA量が正常動物に比べ、わずかに高い傾向にあるが、有意な差は認められなかった。今後例数を増やして計測していく予定である。免疫染色については、本年度は未実施である。 一部計画の変更があったものの、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、網膜のビタミンA量測定の例数をさらに増やし、週齢等との関連も評価する予定である。また、これまで行ってきた研究でRNA-seqを用いた発現遺伝子の網羅的解析では、視細胞変性ラットにおいて、視細胞に存在するレチナール代謝酵素が減少する一方、ミュラー細胞に存在するレチナール代謝酵素の増加が確認されているため、免疫染色等により網膜における局在を調べる予定である。加えて、オプトジェネティクス遺伝子導入動物におけるビタミンA投与後についても、ビタミンA濃度測定、RNA-seqを用いたビタミンA代謝経路における関連酵素群の測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は動物実験を既存の機器を用い行ったため、実験費用に未使用分が発生した。また、実験において、既存の技術を用いたため、条件検討などに費用が不要であり、実験を予定通り終了することができた。そのため、実験費用に未使用分が発生した。 (使用計画)次年度は、チャネルロドプシンを発現させた網膜などでのビタミンA量を測定すること、またビタミンA代謝関連酵素についてRNAseqでの測定を行うことを予定しており、これら測定に係わる費用が発生する。動物飼育が長期に渡るため、これらに対する人件費が発生する。
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